ミニバンの魅力はシートアレンジだけにあらず
ボディサイズは全長4590×全幅1830×全高1685mm。可変バルブタイミング機構を備える直噴1.6リッターターボエンジンはミッションにより最高出力を変更。4ATは140ps、シーケンシャルMTの6速エレクトロニックギアボックスシステム(EGS)では150psとなる |
もちろん、国産ミニバン文化に遅れている点も多々ある。その際たるものはシートアレンジ。直感的に、スムースかつ簡単に、力を入れず、しかも収まりがキレイなどという“からくり”のような芸当では、国産車に一日の長がある。当然だろう。
C4ピカソも最低限のことはできるが、首を捻ってしばし考えたり、力を無理矢理入れてしまったり、思っていた程大きな物が積めなかったりと、“これが国産車だったらなあ”と思わせる場面は、しばらく乗って実際に使ってみて、何度かあった。特に、2列目3列目を畳み込んでの積載能力は想像以上にだめ。
でも、そんな場面は早々あるわけじゃなく、それにミニバンの役目はあくまでも多人数の快適な移動であって、荷物の運搬じゃない。そして、多人数の快適な移動には当然、ドライバー自身=多くの場合はお父さんも含まれなくっちゃ嘘だ。国産車は、残念ながらほとんど、お父さんそっちのけである。
C4ピカソの素晴らしいところは、運転しているお父さんがまず、気持ちがいい点だ。大きなフロントスクリーン(嫌ならばシェードで狭めることもできる)越しに見える視界は、いつもと同じ風景なのに、その先の“何か”を期待させてくれる。家族と走って、さらに遠くにドライブしてみたい、もっともっと乗っていたい、そんな気分になる。運転に対する積極的な気持ちの中から、家族を思っての安全運転や心地よい緊張感も生まれるのではないか。
もちろん、お父さんだけが心地よくでもしょうがない。これで他の席の居心地が悪かったら、そんなクルマはミニバンじゃない。C4ピカソのいいところは、2列目はおろか3列目でも、気分よく座っていられる点だ。そのことは、シートアレンジのやりにくさと裏腹かも知れない。要するにシートをちゃんと作り込むことと、シートを簡単に畳み込めることは、両立し難いのだろう。
自分と、そして家族と、両方の想いに応えるミニバン。クルマ好き、運転好きが乗っても満足できるミニバン。一風変わったスタイリングのミニバン。ミニバン熟成の日本にあって、もっと注目されていい存在だ。シートアレンジで、ミニバンを判断してはいけない。
フロントガラスが頭上まで広がるスーパーパノラミックウインドウなどによる解放感も魅力的。09年のマイナーチェンジでガラスルーフも標準採用となった |
センターパッドが固定式のステアリング回りにスイッチ類を配置。コラムシフトは往年の名車DSと同様に上部に配している。約30cmの長さをもつスライディングサンバイザーも装備した |