走ることは人の世の繰り返しによく似ている
アウディではリナルド カペロ、トム クリステンセン、アラン マクニッシュ組(No.1)が総合3位に入賞 |
午後4時。ゴール。汚れたマシンたちが、殊の外、輝いて見える。彼らは、そう、走り抜いたのだ。24時間戦って尚、動いているから美しいのだった。
表彰式では観衆がコース内に入ることができる。今年のル・マンには23万4800人が詰めかけた |
優勝したプジョーの旗を手に |
驚くべきは、あれだけいた観衆が表彰式後一時間もすればすっかり見当たらなくなり、我々が駅に向かう18時ごろには渋滞さえなかった。サーキットの立地や放射線状に伸びる道路といった環境要因も大きいのだろうが、さすがはレースが文化として根付く土地だけのことはある。
完走した者たちは、すべて笑っていた。
それを見守ったファンは、全員、心から拍手し笑った。
孫を連れた老夫婦が、若者同士のカップルが、大金持ちが、近所のおばさんが、フランス人もイギリス人も、そして日本人の我々も、みんなみんな幸せを実感した。
走るということは、きっと、心からの欲求であり、愉しみなのだろう。目的地のない速さを競う無駄。それが、生きる喜びを生み、文化となる。人の世の繰り返しに、よく似ていると思う。