「工芸品」的な手間をかけて送り出されるアルナージ
清潔でクリーンな工場内部。「工場も大切なショールームたれ」という精神が貫かれている |
アッセンブリー工場に入る。完成したばかりのベントレーが無造作に並んでいることもさることながら、いかにも清潔でクリーンな工場に、まず目を奪われる。各自が気付いた時点で掃除に取りかかれるよう、各ステーションに清掃用具が備わっており、互いにクリーンネスを競い合うらしい。原始的だがチームワークの育成にも効果がある。世界中からVIPユーザーが製造途中の自分のクルマを見に訪れることから、「工場も大切なショールームたれ」という精神が、クルー工場では貫かれているのだ。
コンチネンタル系のライン。ウッドやレザーの選択まで含め、1台の完成に要する時間は5週間となる |
中央でU字型に動いているのがコンチネンタル系のアッセンブリーラインだ。合計50のワークステーションがあり、シャシー組み立て、エンジン積み込み(エンジンマリッジと呼ぶ)、内装、オーバーヘッドキャリアで運ばれて来た塗装済みボディとの合体、などが行われる。
1つのワークステーションに与えられるタクトタイムは18分。コンチネンタル系のファイナルアッセンブリーに要する時間はおよそ2日ということだが、ウッドやレザーの選択まで遡って計算すれば、1台の完成に要する時間は5週間となる。
面白いことに、ほぼ1年前に訪れた際には、黒や白といったモノトーン系のコンチネンタルが多勢を占めていたが、現在は多少、全体のボリュームも少なくなったかわりに、色味もカラフル。おそらく、ブラックコンチネンタルを好んで買った金融筋の若い顧客が激減したからだろう。
また、注文数も減った上に全体のフィニッシュも向上したからだろうか、口うるさい日本の顧客向けに用意されていた日本仕向け専用チェックラインはなくなっていた。
ちなみに、コンチネンタル系ラインの脇にI字型に配されたアルナージ系アッセンブリーの1ステーション当たりタクトタイムは19分がターゲット。こちらはコンチネンタル系と違って、以前と様子がほとんど変わらない!要するに上代4000万円クラスの顧客層には、それほど変化がないということか?!
アルナージ系のライン。「工芸品」的な手間をかけて世に送り出される |
4ドアセダンのアルナージファイナルシリーズを筆頭に、少量の2ドアオープン/アズール、最も多い2ドアクーペ/ブルックランズが並んでいた。今ではほぼ全量が特別仕立て=マリナー注文で、以前のようにアッセンブリの途中で抜き取って特別に仕上げるのではなく、最終的に全てのアルナージ系がマリナーに持ち込まれている。
アルナージ系1台を完成するのに要する時間は5ヶ月(もちろん、もっとかかる特別仕様も多い!)。手作業とカスタマーの細かな要望に徹底的に対応するアルナージ系は、現代のクルマ界において正に、「工芸品」的な手間をかけて世に送り出される。ちなみに、コンチネンタル系のマリナー仕様はライン装着。前述したようにアッセンブリーラインを停めることができないからである。
ウッドの工程やマリナーについては次ページで