BMWである必要性を感じさせる走り
フロントシートにアクティブヘッドレストを採用するなど安全性も向上する |
走りは、相変わらず上等だ。335iのパワフルさは周知の事実だが、改めて乗ると、4千回転近くからのトルクのノリといい、高回転域のエンジンフィールといい、ドライバーを挑発してやまない。レスポンスの良さを右アシの裏で感じるようになれば、もうBMWの6発から離れられなくなる。
エンジンを掛けたあとの、振動やノイズは全てドライバーをせき立てる。少々せわしなく思えるほどだが、これくらい特徴のあった方が、今の時代は存在理由があっていい。そのブランドである必要性を感じさせないプロダクトなんて、いったい買う意味がどれほどあるというのか。 特に、国産車より高い(同程度のクラス比で)輸入車では尚更……。
だからこそ、BMWはマイナーチェンジでBMWであることを深化させたのだと思う。いまどきこれだけエンジンの存在を感じさせるクルマはないし、シャシーとの一体感を高めてくれるクルマもない。なんと言っても、こいつは見た目ただのサルーンだ。
ランフラットの乗り心地もかなり改善された。よほど注意深く隙を探らなければ、文句は見つからない。端的に言って、しなやかさが増している。コーナリング中の懐も深くなった。トレッド増も好影響を与えているのだろう。
ただ、自由になるハンドリングは多少気ぜわしく、長距離のドライブを遠慮させる気がする。もちろん、安定感はあるのだが、どんな場面でも曲がりたがる性質はそのままで、実際に曲がって走る(高速コーナーなど)とクラス最高のファンがある。ずっとそんな具合にやられたら、免許が幾つあっても足りない。
ツーリングと呼ばれるステーションワゴンモデルもセダン同様にマイナーチェンジを受けた |
3シリーズは、楽しい実用車だ。だから、毎日、それほど長くない距離でも運転を楽しみながら走っていける。ただし、長い距離はけっこうしんどい。急いでいるならまだしも、のんびりとドライブ、というわけにはいかぬ。精神的に、急かされるのだ。今どき、こんな刺激的なクルマは珍しい。そこがBMWらしさ、か。
もちろん、右アシをちゃんと制御できるオトナならば、低回転域を上手く使って、クルマからの刺激を抑えつつ、ごくごくフツウのクルマのように走らせることもできる。世の中の、多くのBMWドライバーは、そのあたりのコツを掴んでいるから、年がら年中、気色張ってドライブするわけじゃないのだろう。BMWと長く付き合えるか否かは、貴方のセルフコントロール力にかかっているのかも知れない。
撮影:向後一宏・カーセンサー