シルエットは美しく、サウンドは心に響く
最高出力440psを発生する4.7リッターエンジンに、6速セミオートマチックのMCシフトが組み合わされる |
エンジンを掛ける。キーを捻るという行為が残っていて、何だか嬉しい。そして、掛かった瞬間の豪快(はた迷惑とも言う)なエグゾーストノート演出。アストンマーティンバンキッシュ以降、高級スポーツカーには必須の演出である。エンジンを切るとギアは自動的に1速へリンケージされるが、キーを捻るとNになる。まだ、パーキングブレーキは1速指示で自動解除だ。
オートマチックのグラントゥーリズモよりも、わくわくどきどき度は数段上。当然か。ただし、ロボタイズドミッションゆえ、低速時のマナーは数段下。LSDの影響か、低速旋回時にはがっがっがっと、ギアが歪んで食い込むような嫌な音がする。
オートモードで走れば勝手にシフトアップ&ダウンでラクチンだが、変速ショックが気持ち悪い。自分でタイミングを決めた方が圧倒的に心地いいのは、シングルクラッチMTのロボタイズミッションの宿命だ。
ならば、とスポーツモードにして走る。巡航時でも腹にこもる音が心地いい。オレはフツウのクルマと違うんだぞオーラを散らしまくっている。交差点でのスタートでは、多くの人が振り向く。そして、驚く。“フェラーリじゃないのか”という声が聞こえてきそうだ。
ライドフィールは、やっぱり硬め。間仕切りのはっきりとした板のような感覚もある。節足動物になったような気分……と言ってもなりようもないのだが。
サウンドは、素晴らしい。フェラーリよりもやや重低音が効いていて、そのぶん重奏的だ。ボクは早朝のビル街を、一段低いギアでゆっくり流すのが好きなのだが、そんなシーンに最も良く似合うのがマセラティV8のサウンドである。ガラスウィンドウに映る自分のクルマを視界の端に捉え、ちょっとした自己陶酔に浸ろう。シルエットが美しいクルマ、サウンドが心に響くクルマ、だけに許された極上のドライブシーンである。
レザーとアルカンタラのスポーティなシートを採用 |
レブリミットが7600rpmとなった4.7リッターV8エンジン。0-100km/h加速は4.9秒とされた |
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