美しい獣

石造りの町並みに溶け込むそのスタイリング  撮影:松本明彦

クアトロポルテは五感で乗るクルマだ。自分自身の五感を研ぎ澄まし、没入し乗りたいクルマだ。クアトロポルテの運転は緊張し、クルマから降りると疲労感が残る。しかしそれは決していやなものではなく、充実した時間を過ごした時の、心地よい緊張感や疲労感と同じ種類のものなのだ。

グリルとヘッドライトのバランスは、初代を思い起こさせる。 撮影:松本明彦

クアトロポルテとの初対面は、まずはその周りをゆっくりと歩きたい。その美しい姿を愛でるのは、眼福至福の時である。現代のクルマの基準からすれば、フロントのバランスは、一見グリルに比してヘッドライトが小さいようにも感じる。しかし先日知人の自動車整備工場を訪ねた時、そこに置いてあった初代のクアトロポルテを偶然見かけて、その謎は氷解した。初代と同じバランスなのだ。最新のクアトロポルテも、そのヘリテイジ(後世に伝えるべき遺産)を大切にしてデザインされているのだ。視覚に訴える喜びだ。

クアトロポルテのデザインは、ピニンファリーナのクリエイティブディレクター、奥山清行氏によるものだ。 撮影:松本明彦

5mを超える大柄な4ドアセダンにも拘らず、前後のフェンダーに抑揚の付いたフォルムは、筋肉の付いた四足の美しい獣のようだ。前47:後ろ53と言う最適な重量配分を実現するために、ギアボックスとディファレンシャルを一体化してリアアクスルに搭載する「トランスアクスル・レイアウト」を採用するのみならず、3,064mmと言う長いホイールベースを活かして、エンジンを前輪後方に搭載する。そして短いオーバーハングは、セダンでありながら高いスポーツ走行性能を視覚化し、見るものに想像させる。ピニンファリーナの署名の入るクアトロポルテのスタイリングは、そのクリエイティブディレクター、ケン奥山こと奥山清行氏によるものだ。奥山さんは他にも、フェラーリ・エンツォ、612スカリエッティ等のデザインでも知られる。この美しいデザインが日本人によるものである事を、我々は誇らしくうれしく思う。