“異質なクルマ”輸入車をどう捉えるか
この2台の争いで、すっかり影が薄くなった印象のあるジャガーXFとフィアット500だが、いずれも日本で輸入車に乗ることの意味や価値を教えてくれる、言わばガイシャらしいガイシャだと言っていい。そういう意味では、上の2台を上回る存在感がある。10ベストカーに選出されたジャガーXFは、XKのコンセプトを受け継いだクーペのようなラインの外観をもつラグジュアリィなミドルクラスサルーン。ダイヤル式シフトセレクターも採用する |
ジャガーXFは、FRスポーツセダンがプレミアムカーとして成立するための条件を確立してみせた。そのライドフィールは圧倒的に素晴らしく、内外装のオリジナリティと質感も上々だ。惜しむらくは、エンジンが古い。シャシー性能において、本年度ナンバー1輸入車だった。
10ベストカーに選出されたフィアット500。往年の名車となる初代のモチーフを取り入れつつ、現代的にアレンジされた内外装をもつ |
反対に、フィアット500は、乗る人全てを笑顔にしてくれる、とてもファンなクルマだ。特別賞MostFunに推した選考委員が多かった(二番手の得票)ことも頷ける。中身はパンダで、いい味を出しているが特にこれといって見るべき新しさに乏しい。中でもロボタイズドミッションのぎこちなさを多くの選考委員は嫌ったはずだ。ガイシャ慣れした人には“こんなもんで○”も、そうでない人には“こんなもん×だ”になろう。
カーライフを楽しむ遊ぶアイテムとしては評価できても、純粋にクルマとして評価できなかったということ。私は、輸入車というニッチなクルマである以上、国産車と違う価値をもたらしてくればくれるほど、評価すべきだと思っているが……。
そういう意味では、日本車と輸入車を同列で評価する現在の仕組みが、やや息苦しいか。最も売れているブランドでも年間5万台前後の市場である。それはホンダフリードの数ヶ月分でしかないのだ。
日本市場において、輸入車は確実に“異質なクルマ”であり続ける。そこをどう捉えるかによって、判断が分かれると言っていい。
もっとも、今更以前のように国産10台、輸入車5台を選ぶ方法に戻してみても、国産車の中から年間10モデルもの魅力的なクルマを選ぶことができるのかどうか。近年のエントリーリストを見るにつけ、ボクはそっちの方が心配だったりする。
各賞に輝いた5台 |
今年はいろんな意味で閉塞感に満ちた一年だった。ちょっと気が早いけれども、来年は、もう少し明るいニュースが増えて欲しいもの。国産勢ではホンダインサイトやトヨタプリウス、スバルレガシィ、マツダアクセラといった大物のフルモデルチェンジが相次ぐ。輸入車では、VWゴルフを筆頭に、M・ベンツEクラスやアルファロメオミトなど、こちらも注目モデルが目白押し。
今年よりも楽しい一年になって欲しいものだ。
撮影:カーセンサー