木と革の世界
都心の夜景とジャガーXJ L 4.2 撮影:松本明彦 |
今回試乗したジャガーXJ L 4.2は、全長、ホイールベース、キャビンスペースを125mm伸ばしたラクジュアリーモデルだ。英国の高級車ジャガーXJが、他の高級車と最も異なるのはその「たたずまい」だろう。低い全高、小さなキャビン、水平に伸びるウェストライン、長いテール、立ったCピラー、昔ながらの丸目ヘッドライト等から醸し出されるその雰囲気は、ジャガー独特のものだ。
インテリアにふんだんに使われた木と革 撮影:松本明彦 |
そしてインテリアを見れば、その感はさらに強まる。革と木の世界だ。普通クルマの革内装と言えば、シートとステアリング。さらに高級になると、センターアームレストにドア内張りとシフトノブ。その上になると、ドアアームレストとセンターコンソール等も革になる。ジャガーはこれら全てに加え、ステアリングパッド、サンバイザーやアシストグリップ、ドアポケットまでもが革なのだ。しかし詳細に見ていくと、XJの通常のグレードでは、実はこれらで本革と合成皮革を部位によって使い分けている(最上級のスーパーV8は全て本革)。それでも見事に、ゆったりと寛げる雰囲気になっているのは、丁寧に施されたハンドステッチと使い分けのセンスのせいだろう。まさにジャガーワールドだ。
ちなみに従来の最上級車種デイムラーの本革には、ロールスロイスやフェラーリにも使われる、コノリーブラザーズ社製のオートラックスが使われていた。現在の最上級車種スーパーV8には、コノリーブラザーズ社なき後、イタリアはバスビオ社のソフトグレインレザーを使用する。この素材は、オートラックスと同等以上のクオリティを実現している。
またインパネ、センターコンソール、ステアリング、シフトノブ、ドア上部に使われる美しい光沢の本木目は、バーウォールナットを使用。胡桃の根の部分だ。つぎ木をしてできた病理部分「杢」(もく)が、実は美しい渦巻きの木目を作り出している。ジャガーでは、助手席エアバッグパネルとセンターパネル、センターパネルとメーターパネル、そして左右のドアパネルで、この木目が左右対象になっている。