チェックアウト後、リカーショップでお気に入りのメゾンのシャンパーニュを購入。すると、シャンパーニュと新鮮なシーフードが食べたい!という突然の衝動に駆られて、再度パリを横目に西、ノルマンディー地方へ向かって走り出した。こんな突然の思いつきにも応えてくれるカーナビ、日本のように到着時刻やマップ表示はないけれど、目的地を入力すると次に曲がる場所までの距離が表示される。オートルートでは「120キロ、とにかく真っ直ぐよ!」といった感じでしばらくは音沙汰なし。このミニマルさがフランスらしく好感が持てる。
走ること5時間、サンルーフからは海風、そして潮の香りが舞い込み心地良い。セーヌ河口にある港町、オンフルールに到着した。途中ほとんど休憩もとらず運転し続けたが、背中や腰の痛み等の疲れは全く感じられないのには驚かされた。これもレザーシートのお陰だろうか。
向かうはヨットハーバーを臨むシーフードレストラン。ムール貝は5月半ばではまだ小ぶりであったが、ムール・マリエール(ワイン蒸し)を堪能。パーキングに戻ると老夫婦が話しかけてきた。私はフランス語はほとんど分からないが、「セ・ボン!」とクルマを褒めているのが伝わってきた。たとえ本国でも地方ではまだ新しいクリオは少ないのか、老若男女に関わらず声を掛けられることが多い。フランスでは見知らぬ人が素敵な髪型をしていると、「どこの美容室でカットしているの?」と当たり前に声を掛ける。このクルマはローカルにもチャーミングに映るようだ。
もし私がフランス語を流暢に話すことができたなら、ベージュを基調としたインテリアも見て欲しかった。ウッドにキュービックがアクセントのインパネが効いていて、とても品の良い空間に仕上がっている。そう言えば、ステップとボディのサイドに施された“イニシャル・パリ“というロゴ。これは、パリに憧れを抱く日本の女の子にも受けそうだ。
この時期、日没は21時過ぎ。気がつけばすでに19時をまわっている。すると突然の警告音に驚かされる。ガソリンである。オートルートでもスタンドは50キロに1ヵ所程度。やや冷や汗モノで人気のない24時間営業のスタンドを発見。ホッとしたのも束の間、“クレジットカードを入れる”以外のフランス語が理解できず立ち往生。が、偶然に通りかかった少年に助けてもらい無事満タンとなった。どうやら、まずマシンの番号を入力しなくてはならなかったらしい。フランスの地方では交通標識等も含めて英語の表示は少なく、英語も通じないことが多い。辞書等、フランス語のコミュニケーションツールはマストだと半ベソ状態で痛感した。