ビバンダムが生まれたのは今から100年以上前の1898年。4年前にリヨンで開催された博覧会で、ミシュランはブースに大小のタイヤを積み上げたオブジェを置いた。それを見たミシュラン兄弟の弟エドワールが、兄のアンドレに「これに手足をつけたら人間になるじゃないか」といったのがキッカケだった。
その後アンドレは広告デザイナーのオ・ギャロと会ったときに、彼がビール会社のために描いたものの採用されなかったデッサンに目を止めた。グラスをかかげる男と、「ヌンク・エスト・ビバンダム(いまこそ飲み干す時)」というセリフ。クギやガラスなどを入れたグラスを、タイヤ男に持たせれば、空気入りタイヤはパンクしないというアピールになると思ったのだ。こうして上のポスターが生まれ、タイヤ男はビバンダムと呼ばれるようになった。
上は1911年のヴェロ(自転車)用タイヤのポスターに登場したビバンダム。いまのビバンダムと比べるとタイヤの数がはるかに多いうえに、鼻眼鏡をかけて葉巻をくわえた顔は、ちょっとコワイ。当時は自動車はもちろん、自転車もお金持ちしか買えず、タイヤは高級品。だから白い袋で包んで売っていた。ビバンダムのカラダが白いのはそのためで、上流階級の定番ファッションだった鼻眼鏡+葉巻という顔つきにしたのだという。
それが変わったのは1923年。昔に比べるとタイヤの幅が広くなったことに合わせて、ビバンダムのタイヤも幅広くなり、胴体のタイヤの数は11本から4本に減ったのだ。葉巻もくわえなくなった。おかげで表情はずいぶんおだやかになった。上は1925年のポスター。タイヤを転がしながら右手を上げるポーズは、その後の定番になった。