しかもフランスでは、車両価格はディーゼルのほうが高いが、自動車税は逆に安くなる。日本に比べて年間走行距離が長く、1台のクルマを長く乗るから、買うときには少し出費がかさんでも、その後の燃料代や税金を考えれば、むしろお得になる。これもディーゼルが多くなった原因のひとつだ。
燃費がいいディーゼルは、地球温暖化の原因となるCO2(二酸化炭素)の排出量が少ないから、ヨーロッパ人に選ばれているという意見もある。でもそれだったら、環境先進国といわれるドイツのディーゼル比率(37.9%)のほうが、フランスより上になるはずだ。それにディーゼルは、逆にNOx(窒素酸化物)の排出量は多く、フランスでもドイツでも少しずつ問題になり始めている。維持費の安さがディーゼルに乗るいちばんの理由と考えたほうが自然だ。
そしてもうひとつ、見逃せないのが乗りやすさだ。これは去年の秋、新型メガーヌのガソリン2リッターとディーゼルターボ1.9リッターで同じような山道を走り比べて痛感した。シフトの回数が半分ぐらいですむのだ。低回転のトルクに余裕がある証拠だろう。絶対的な加速も、むしろディーゼルのほうがいいぐらい。これで燃費が良く、税金が安いのだから、こっちを選ぶのが自然というものだ。
ただ忘れてほしくないのは、フランスではディーゼルだけでなく、ガソリンエンジンの乗用車も数多く走っていること。ディーゼルにはディーゼルの、ガソリンにはガソリンの良さがあり、自分の使用状況に合わせて自由に選んでいる。そのあたりが日本とは違う。クルマとの付き合い方がはるかに大人だと痛感してしまう。
日本でも低硫黄の軽油が売られるようになったことがきっかけになって、ディーゼル乗用車が見直され、かつての504やCXのようにフランス車のディーゼルがふたたび輸入されるようになると、個人的にうれしいのだが。
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