ルノー/トゥインゴ

ロードインプレッション トゥインゴ・クイックシフト5(2ページ目)

ヨーロッパでは今年春のジュネーブショーで発表された、ルノー・トゥインゴの新しいクラッチレスMT、クイックシフト5が、本国では昨年実施されたマイナーチェンジ後の車体と組み合わせられ、8月1日から日本でも販売されることになった。それに先駆けて報道向けの試乗会が行われたので、乗った印象を交えて報告していくことにしよう。

執筆者:森口 将之

まずはマニュアルモードを選んでスタート。街中の流れに乗って走るレベルでは、クラッチのつながりも、シフトアップもわりとゆったり行う。ただし、この種のギアボックスではおなじみの、シフトアップ時の減速感(アクセルを踏んでいるのに加速しないという心理的なことが原因)はあまりみられない。クイックシフト5はファジー制御を採用しているとのことだが、それがクラッチをゆっくり切るなどの操作をしているのだろう。

一方アクセルを深く踏んで素早く走ろうとすると、クイックシフト5はそれに応えてくれる。クラッチのつながりも、シフトアップも、スピーディに行ってくれるのだ。エンジンもある程度から上の回転域で力が盛り上がるタイプということもあって、ヨーロッパのコンパクトカーらしく、エンジンをガンガン回して走ったほうが乗りやすい。シフトダウンはきちんと空吹かしを入れ、ショックなしで変速をしてくれる。その作動はファジー制御のためかゆったりとしていて、いつの間にかエンジンブレーキが効いているというフィーリングだった。

オートモードはここまで書いた操作を、クルマのほうで勝手に行ってくれると考えてもらえばいい。メーターの表示はAのままなのでどのギアに入っているのかは分からないが、ギアの選択は適切だ。おもしろいのは下り坂やブレーキング時で積極的にシフトダウンしてくれること。トルコン式ATと同じ性格で、いかにもルノーらしい。

マイナーチェンジではシャシーにも改良が施されている。サスペンションではフロントにスタビライザーが備わり、リアのスタビライザーは太くなった。電動パワーステアリングは制御を見直し。ブレーキはホイールに合わせて大径化され、フロントのディスクはベンチレーテッド化されている。

その結果乗り心地は固めになった。街中では直接的なショックこそないが、上下動が小刻みになっている。昔ながらのフランス車らしさは薄れたといっていい。その代わり高速道路でのフラット感は増した。さらにステアリングの切れ味は自然になり、コーナーでは以前よりも素直にノーズが内側を向いてくれるようになった。ブレーキははっきりと制動力がアップしている。いずれも積極的に走ろうという人にとっては歓迎すべき変更だろう。

僕はイージーのMTライクな操作感や、旧型ならではのマイルドな乗り心地が好きなので、新型に乗っても自分のクルマに対する愛情が薄れることはない。でもイージーになじめないという人や、積極的に走りたいという人にとっては、クイックシフト5という新兵器を得た新型は好ましい存在に映るだろう。あとは信頼性がどうなのかということが気になるが、クラッチ制御が電磁式になったということで、多少は安心できるかもしれない。
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