PSAとフォードは1998年9月に技術提携を結び、共同でディーゼルエンジンの開発を始めた。フォードはPSAの持つディーゼルについての豊富な経験、PSAはフォードの生産規模の大きさに興味を持ち、それが手を結ぶきっかけになったようだ。今回発表された1398ccの直列4気筒エンジンはその結果生まれた第1弾。PSAではHDi1.4、フォードではデュラトルクTDCi1.4と呼ばれる予定だという。
ディーゼルのキモとなる燃料噴射方式は、現在主流のコモンレール直接噴射式。PSAではプジョー406やシトロエンC5などに積まれる2リッター版に続くものだ。従来の間接噴射式に比べて燃費を20%改善し、CO2の排出量を抑えるほか、低回転で大トルクを発生することから扱いやすく、振動もガソリンエンジンとそれほど変わらないという。有害排出ガスが少ないのもポイントで、このままでユーロ3と呼ばれる現在の排出ガス規制をクリアし、次に実施されるユーロ4も比較的楽にパスできるとのことだ。
シリンダーブロック・ヘッドともにアルミ製となるこのエンジンは、ヘッドは8バルブと16バルブ、ターボチャージャーも2種類用意されるとのことで、何種類かの仕様が用意されるらしい。ちなみに最高出力は43~66kW(60~92PS)、最大トルクは150~200Nm(15.3~20.4kgm)で、燃費は22.2~29.4km/リッターをマークするという。従来の間接噴射式1.9リッターを50kg下回る98kgというエンジン重量も魅力だ。生産はフォード向けも含め、PSAのドゥブラン工場で一括して行われ、当初は1日6000基の割合でラインオフされるらしい。
PSAでは同社のクラス1、クラス2のプラットフォームを用いるクルマに搭載する見込み。1.4リッターという排気量を考えると、プジョーでは206や307、シトロエンではサクソやクサラに相当するクラスに搭載されるのだろう。現在206/クサラには1.9リッター、サクソには1.5リッターのいずれも旧式な間接噴射式ディーゼルが採用されているが、これらが新型に切り替わるはずだ。
両社の共同開発・生産はこれで終わったわけではなく、続いて今回の1.4リッターをベースとした1.6リッター、2リッター4気筒、2.7リッターV6、小型商業車用が登場する予定だという。そして2005年には、1日9000基以上ものエンジンが生産されることになり、世界最大のディーゼルエンジン生産グループとなるとのことだ。
そういえばPSAは、トヨタとの間で小型乗用車の共同開発・生産についての話し合いをしているという報道が流れたばかり。こちらも今回と同じように、トヨタはPSAの小型車作りのノウハウ、PSAはトヨタの生産・販売力が魅力に映ったことからスタートしたという経緯がある。資本については独自性を保ちつつ、得意分野の技術を武器に他のメーカーと手を結ぶことで競争を生き抜いていくという彼らの戦略が、これで一層はっきりしたわけだ。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。