一昔前のパリの街中を撮った写真やムービーで、自転車の前輪の上にエンジンを乗せたヘンテコな乗り物を見たことがあるという人、けっこういるんじゃないだろうか。それがソレックス、正式名称ベロ・ソレックスだ。イタリアのベスパ、日本のスーパーカブに相当する、フランス人にとってもっとも気軽なエンジン付きの乗り物といっていいだろう。
ソレックスの歴史は古い。キャブレターでおなじみのソレックス社が創立したのは1905年だか、その約10年後には早くも、自転車にエンジンを組み合わせた乗り物の開発を始めていた。その後開発は一度中断されたが、第2次世界大戦中の40年に試作車が完成。戦後46年に量産が始まっている。その後何度も改良が続けられ、一方では世界各国でライセンス生産も実施。その中には日本のダイハツも含まれていた。

正式名称はソレックスS3800といって、本国で最後まで作られていたモデルと同じ。エンジンは2ストローク単気筒49ccで、日本の50ccスクーターでよく見られるスペックだ。ただしチューニングはそれとは比べものにならないほど低くて、最高出力はわずか0.79PS。これを2500rpmという低い回転数で生み出す。

2月下旬に納車されたソレックス、すでにナンバーを取って家の近所を走り回っているのだが、いやはやこれがまたあらゆる意味で新鮮。機会があればそのへんについても触れていきたいと思っている。お楽しみに。