
つまり111Rというのは、数が多く出るアメリカ市場を想定した、アメリカの要求を多くのんだモデルなのである。もちろんロータスにとって、それらの要求は自らのプロダクトの性格を変えるものであることは分かっていたはずだ。しかしロータスは、それこそスポーツカーメーカーとしての意地で、要求はのんでもツマらない、のんきなクルマにエリーゼを仕立てることはなかった。ロータスというスポーツカーメーカーが送り出すライトウェイト・スポーツ、エリーゼとしての他には実現できない走りというものを、形こそ少し変わったがしっかりと盛り込んだのである。この辺りに僕は、ロータスというメーカーの志の高さを感じたのだった。
アメリカは本当に、特にライトウェイトなスポーツカーに対して、無茶な要求をしてくる国である。だがスポーツカーメーカーは、決して要望を鵜呑みにせず、自身のフィロソフィーをしっかりと盛り込むことを忘れていない。例えばマツダも最近、ロードスター・ターボというモデルを出したが、これもまたアメリカの声によるもの。しかし実際の乗り味走り味は、本質から離れないような努力がなされている。
そしてエリーゼもまた同じ。いやむしろこちらの場合、走りの本質から離れないようにしたどころか、ポテンシャルの高さをさらに見せつけたという点においては、非常に清々しい気持ちすら抱くことができる。