実際に走らせた感覚としては、これまでのエリーゼよりも走り全体にカッチリした、ソリッドな感じが生まれている。サスペンション全体がビシッと張りのある感じで路面をとらえている。操舵に対するクルマの動きにも当然、シャープな感じ(と同時にハードな感じ)が増している。つまり車重が増えたため、これまでのようにしなやかにサスペンションを動かしていては、重さを支えきれないからである。
同時に搭載エンジンがエリーゼ史上最も高出力となったことに対応していることを忘れてはならない。こちらはもともとの120ps仕様からすれば、実に1.5倍以上のパワーアップ。その力を後輪でしっかり受け止めながらスタビリティをアップするためには、サスペンションはある程度ガッチリ路面を取らえる性格のものでなければならない。
これまでのエリーゼでは、しなやかさで路面の変化を上手くいなしていた感じがあり、それをして蝶が舞うような、エリーゼ特有の「ヒラリ感」が特徴であり魅力だった。
車重と動力性能が増した111Rでは、当然そういう風にはいかない。現代の一般的な自動車よりも軽量であることから来るヒラリ感はあっても、もともとのエリーゼが持っていたヒラリ感は薄くなったのが実際だ。
ただ同時に、これまでのエリーゼでは手に入れられなかった部分が111Rでは実現できたこともポイントだ。
カッチリしたのは「感覚」だけでなく、実際の安定性の高さにも現れている。例えば高速道路をクルージングしている時は、以前のエリーゼだと圧倒的に軽いことからフロントの接地感も薄目。同時に実際の接地に関しても高速域でフロント回りがフラフラと落ち着かないことから、接地そのものが薄目であることが分かった。それが111Rでは全体的に車重が増したことから、フロントの接地感はもちろん実際の接地もしっかりしたのである。だから高速域では200km/h超でもフロント回りがしっかりしており、気を遣わなくて済むのだ。
コーナリングにおいても、ヒラリ感が薄くなった代わりに、操作に対するダイレクト感が一層増し、かつ今まで以上に高い速度域でコーナーをクリアしていくことができるようになった。従来のエリーゼよりも、このシャシーが持っている潜在能力を引き出している感じがするのである。
つまり111Rは、重くなった車重を決してネガティブなものにすることなく、エリーゼというクルマが持つポテンシャルの高さを極限まで引き出す方向で味付けがなされているのである。
もちろん動力性能に関しては、トヨタ・エンジンを得たことで圧倒的に高まった。エリーゼ史上最もヘビーなモデルでありながら、パワーウェイトレシオは4.58kg/psと素晴らしい数値を実現している。そう、最も重いが最も速いのである。