ミニバンという概念は既に存在していないと思えた。あくまでもドライバーの意志に忠実に反応し、駆け抜けていく1台の新しい乗り物という感覚がそこにあった。
鷹栖テストコースで試すことができた新型オデッセイ・プロトタイプは、これまでのどのカテゴリーにも属さないビークルに思えた。
従来に比べると圧倒的に背が低くなったわけだが、それがイコールで軽くなったことにはならない。しかしそんな事実とは裏腹に、走りは一回り小さなクルマのように感じる。
写真は2代目モデルのものです |
新型オデッセイ・プロトタイプの走りについて話を進める前に、このクルマの背景を軽くおさらいしておきたい。オデッセイの本質を語るにはそれがとても大切だからだ。
94年に登場した初代オデッセイ最大の意義というのは、乗用車ベースのプラットフォームを使って多人数乗りビークルを作り上げた、ということ。ここで勘違いしてはいけないのが、ホンダは何もその後にブームとなるミニバンを作ったわけではないということ。なぜならホンダは当時、オデッセイをミニバンとは呼ばず、クリエイティブ・ムーバーと呼んでいることからもそれは明らかだ。
初代オデッセイ登場後に、いわゆるオデッセイ・タイプという言葉が生まれたわけだが、それは他メーカーが勝手にオデッセイの「ミニバン的部分」を真似ただけの話。
一方オデッセイが乗用車ベースの多人数乗りビークルを作り上げた真の理由は、乗用車に近い感覚を持たせたかったからである。これは皮肉にもその後のオデッセイ・フォロワーが見落とした部分だったといえる。
写真は2代目モデルのものです |
2代目オデッセイの走りはBMW5シリーズをベンチマークにして開発されたというのは有名な話。2代目の狙いもまた、乗用車に近づくことが本質だったといえる。
そう考えると3代目に当たる今回のプロトタイプというのは、実は本質の部分では初代/2代目の流れを汲んだ正常進化版だと分かる。確かに全高を1550mmにしたという強烈なトピックがあるだけに、他のミニバンとは全く異なる、大幅に方向を変えたクルマのように感じるわけだが、それはあくまで存在として新たな方向性やイメージを作り上げるためであり、もともとオデッセイが狙った「走り」という本質を変更したわけではない。もっともそれだけ勇気を持って存在の新たな方向を目指せること自体が、ホンダならではのユニークな部分であるのだが。
こうした流れからも分かるように、今回試乗した新型オデッセイのプロトタイプは、オデッセイとしては極々全うな道を歩んで到達した結果なのだといえる。