一方シャシーからも新しさを強く感じることができる。レベルの高いダイナミクスと快適性がしっかりと高いレベルで両立されているのだ。走りの面でまず何より光っているのは、その乗り心地の良さだろう。タイヤをしっとりと路面に押しつけながら、凹凸や轍をしなやかにいなし駆け抜けていく。いかにもサスペンションが路面を追従している感じで、路面との関係性までをも滑らかに感じさせるのだ。
高い快適性を支える大きな要素でもある乗り心地の良さは、時にスポーツカーにとってはネガティブな要素にもなる。例えばワインディングを走らせた時に、ロールやピッチが大きく出てしまい、一体感を削ぐ要因になる。しかしRX-8ではそういう心配がなかった。
確かに従来のスポーツカー的価値観からすれば、良くロールするクルマかもしれない。しかしヨー慣性モーメントの小ささと50:50という前後重量配分の良さが、運動そのものを実にスッキリとしたものに感じさせる。
マツダはこれまで、ロードスターやRX-7といったスポーツカーで、常に「人車一体」という考え方を強く謳ってきたが、それはRX-8にも確実に引き継がれた。しかもRX-8の場合は、4ドア4シーターというコンセプトを持つクルマらしく、基本的に乗り心地の良さや高い安定性を感じさせた上で、その印象が構築されている点が特徴だ。
操作に対してそれなりに大きなクルマの動きを見せる一方で、操舵に対するノーズの反応自体はとてもシャープだ。この辺りはまさに「意のまま」を忠実に反映した仕上がりといえるだろう。ただしノーズの反応がシャープでもその後急激にロールが始まるのでなく、じんわりと穏やかにロールする感じがある。もっとも穏やかだとはいっても、それはスポーツカーしては、というエクスキューズを付けた上での話だが。
しなやかなロールによって、RX-8はしっかりと路面をとらえ続ける。ある程度のペースまでは実にしっかりと路面にコンタクトしている感じがある。ただ少し気になるのは、途中に路面凹凸がある中-高速コーナーを駆け抜ける時だ。この状況では先に記した割に大きなボディの動きがネガティブな要素となる。コーナリング中に凹凸を通過すると、ボディがねじれるのかリアの接地が甘くなり、DSCのランプが点灯し制御が入る。
またハイスピード域においては、路面状況によってボディが少し揺れて収まりが悪いと感じる場面がある。舵がシャープで正確なのに対し、ボディの動きはわずかに甘さを感じさせる。反面乗り心地などの快適性はいつまでも失われないだけに、微妙なところだが、個人的にはもう少し中-高速域でドシッとした感じがほしいとも思えた。
もっともこの要求は、かなりスポーツドライビングを堪能した時のものだから、あまり一般的ではないだろう。ただそれでも中-高速域においてドッシリ感が増せば、それ以下の速度域において、さらに安心できる感覚が生まれると思う。わずかな不満はいくつかあるものの、公道を走らせてみて総合的には、とても好印象だった。これだけ快適ながら高い一体感から来る気持ちよさがあり、本気で走らせてもちゃんと手応えもあるし、実際に速い。
レネシスが持つ独特の感触、そしてシャシーから感じられる新たなスポーツ性の高さで、RX-8はまさに、新しいスポーツカーの世界を感じさせてくれる1台だと思えたのだ。
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