最後にエンジンについて少し触れておこう。この部分に関しての印象は、実はセダンやZとあまり変わらない。しかしクルマの運動が理想的なものに仕上げられており、かつクーペという位置づけが与えられるために、Zほどの不満は感じないというのが実際のところだ。つまりクーペのキャラクターが、エンジンの印象を救っているといえる。もちろん望むならば、VWゴルフのR32のような美しい音色と精緻な回転感が欲しいわけだが。
その意味では、走りにおける全てがほどほどであるように、エンジンもほどほど、という感じだろうか。
まとめてみると、このスカイライン・クーペは、まさに走りが「ちょうどいい」位置付けにあるクルマに仕上がったといえる。セダンとスポーツカーの間に存在することは、ある意味中途半端といえるが、だからこそいい具合に力が抜けて頑張りすぎず、ちょうど良いものが出来た、という感じがある。
そしてこのクーペが生まれたことで、スカイライン・シリーズには徐々にブランド性が芽生えつつある。バリエーションの豊富さによる幅広さと奥深さによって、その名前はより立体的なものとなりつつある。考えてみれば日本ではクーペなど売れない。しかし、こういう地道なモデル追加や熟成こそが、ブランド性をもたせるには不可欠である。
また冒頭に記したように、スカイライン・クーペは久々に「大人が乗っても恥ずかしくない」クルマだ。ちょっと色気を求めると、「大人が乗らないと恥ずかしい」オヤジ・クルマしかなく、スポーツ性を求めると逆に「大人が乗るには恥ずかしい」ガキ・グルマのどちらかしかない日本においては、とても貴重な存在のように思える。
つまり様々な意味において、スカイライン・クーペというのは、意義ある存在である。
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