一言、爆発的に速い。6MTを本当に矢継ぎ早に操り、アッという間に180km/hスケールの外に針が位置してしまう。今年頭にスペックCをサーキットで乗って非常に速い、爆発的加速があると思ったが、今回のモデルは驚くことにそれ以上なのだ。おそらく最大トルクは40kgを超えているに違いない。
アクセルを床まで踏み抜くと、本当に弾かれたようにクルマ全体が前へワープする。非常に長い後半のストレートがアッという間に終わってしまうのだ。
等長エギゾーストの採用や吸気系の変更などによって、回転の伸びの鋭さに加え、過給がかかった上の回転でもスロットルに対して即座に反応がある。シングルのボールベアリングターボによる爆発力に加え、レスポンスの良さがあるから、とにかくどこからでも力が溢れていると感じられるのだ。
さらに冒頭に書いた、洗練された印象はサウンドだけでなく、滑らかに回転が上昇していく感じとしても受け止められる。
途中緩やかなコーナーが続く場所で、私は何度もアクセルにおいた右足を緩めた。なぜなら、レスポンスよくラグのない爆発的加速は、緩やかなコーナーですら、その先のガードレールに吸い込まれてしまいそうなくらいに感じさせるほど強烈だからだ。
しかし実際にガードレールに吸い込まれなかった理由は、絶大なる信頼を置くことができるスタビリティの高さである。私はこの時、初めてニュルブルックリンクを体験したわけだが、何事もなく、しかもそれなりに走れたのは、このスペックCプロトタイプのシャシー能力の高さによるところが大きい。
例えば4速で回るコーナーは、途中で起伏が付いていたり、逆バンク的になるところもある。または走行ラインをタイヤ一本ずらすと、非常に不安定な挙動を生み出す場所もある。そんな場所を初めて走ったわけだが、スペックCプロトタイプは限りなく粘りつづけ、私に安心感を提供してくれたのだ。
聞けばシャシーはさらに手が入れられたようで、クイックステアリングやホイールまで強化されている。フロントのクロスメンバーやクロスパフォーマンスロッド、フロントサブフレームの改良、リアトレーリングリンクの変更やサスペンションチューニングの変更などが、「確かに効いている」と思える。
またドライバーズコントロールセンターデフが今回から、イグニッションオンの時にベストバランスの位置に自動的にセットされることも記しておかなければならない。コンペティションと書かれたそのモードにしておけば、常に最適な前後のトルク配分を実現してくれるのである。
また絶大なるスタビリティの高さを感じさせながらも、コントロール性の高さも全く失われていないところが凄い。尋常ではないハイスピードコーナーが続くこの場所では、正確性の高さが強く求められるが、インプレッサはまさに正確そのものだった。
パブリックと呼ばれる一般開放の時間には、様々なクルマが走っているが、その中でインプレッサを走らせると、一般のクルマが「まるで止まっているように見えるほど。さらにその後、常連らしきポルシェ911GT3に遭遇し、インプレッサの実力をさらに痛感することになった。というのも初めてニュルを走った私がドライブするにも関わらず、ロールバー付きのGT3を楽に追い回すことができ、しかも最後には道を譲られたほど。
自動車開発の聖地でインプレッサをドライブしていて、私は日本人であることに誇りを感じた。日本にも、世界の名車と渡り合うことのできるスポーツカーがあるのだと。スペックCはそんな風に思わせるほど、非常に大きな存在感を持って、その場所で輝いていたのである。