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モータージャーナリストから見たフェアレディZ フェアレディZ 第2章

新型Zは今までのスポーツカーにおける価値観で見た場合にはNG。だが、新たなスポーツカーとしての可能性を見いだそうとするその志に関しては大いに賛同する。はたして、その真意は?

執筆者:河口 まなぶ


どんな視点から自動車を見るかで、評価というものは当然変わってくる。

パッケージングやスタイリング、メカニズムなどそのクルマ自体におけるあらゆる部分を踏まえ、かつビジネスとしての戦略や、商品としての訴求力などといった面まで見渡した上で客観的に評価するのか。またはいちクルマ好きとしてそのクルマをとらえ、どう感じるのか主観的に評価するのか。さらには両方をミックスして評価するのかなどなど、視点はいろいろだ。今回Zに接してみて考えたのはまず、そういうことだった。少なくとも、私には2つの視点があると感じた。先に挙げたような評価する視点の違いのように。

ここまでで分かるのは、フェアレディZというクルマが、実際に触れてみてストレートに評価できるクルマではない、ということ。

つまり2つの視点があると感じた時点で既に、まず、いちクルマ好きとして一瞬にして虜になってしまい、客観性を持って評価できないほどではないと言える。それと同時に、あくまで冷静に商品として判断するだけなほどドライでもない、とも言えるのだ。

だから私はこれまで雑誌などで書いたフェアレディZの原稿の中において、「今までのスポーツカーにおける価値観で見た場合にはNG。だが、新たなスポーツカーとしての可能性を見いだそうとするその志に関しては大いに賛同する」というような意味合いのことを書いてきた。そこからも分かるように、やはり2つの視点が常に頭から離れないのだ。

ではまず、いちクルマ好きとしてZを見る。


●いちクルマ好きとしてZをどう感じたか?

私のいちクルマ好きとしての興味は、果たしてZの走りがどんなものか? ということ。

まずエンジンについての印象。VQ35DEユニットは、現代のスポーツカーの基準からすれば低い、6500回転までしか回らない。しかも回転の鋭さはなく、タコメーター上の針の動きも、特別早いわけではない。一定の速度を保って淡々と吹け上がっていく印象だ。では滑らかに回るのかというとそうでなく、回転そのものにはややザラ付きがある。5000回転まではそれなりの滑らかさがあるのだが、それ以降の回転では非常に雑味が増し、ある意味苦しさを感じる。さらにそのサウンドは、外で聞いているとそれなりに(あくまでそれなりに、だ)スポーツカーらしい音を奏でているのだが、室内で聞くとその音は違っており、スポーツカーらしい心を震わせる要素が少ない。以上のことから全体的にもっさりした感じを受ける。

ただし実際の速さ、という意味では現代スポーツカーに相応しい内容を持っている。エンジンはあくまでフラットに回転を上げていき、加速感も強烈ではないが、実際にスピードメーターを見るとかなりの速度に達していて驚く。これはおそらく低回転から大きなトルクが出ており、それが少しずつ増していくからであろう。だから回転とともに伸びが感じられクライマックスに達するのではなく、あらゆる回転から一定以上の力を出している感じなのである。

その意味では、これまでのスポーツカーで良しとされてきたエンジンの価値観は備えていない。高回転まで鋭く吹け上がり、回転が増すに連れて伸びを感じる、そして心を震わせるようなサウンドを伴う…そういうものとは違う。むしろ実用的なエンジンに感じる。
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