さて、パワー/トルクともにわずかなアップでしかない2.2Lエンジンは、前述したユニットそのものの気持ちよさに加え、4気筒ならではの軽量も手伝って、2.0Lエンジン搭載モデルにあるような鼻先の軽さを失っていないところがいい。
しかもドライバーにはマニュアルシフトのレバーを操るという、新たにリズムを取るための道具が増えたわけだから、それは例え同じ2.0Lエンジンだったとしても、余計にハンドリングが向上したように感じたかもしれない。
そう、MTというのは単にエンジンを自身でコントロールできる装置であるだけでなく、操作系の中に含まれることによって(ATはほぼ含まれない)、運転のリズムを彩る要素になるともいえるのである。
サスペンションは相変わらずのしなやかさだ。ただ惜しいのは装着されていたピレリタイヤが乗り心地志向だったようで、少しステアリングを多めに切っただけで盛大に鳴いてしまったこと。これをもう少しだけグリップ性の高いタイヤに変えて走ったら、かなり気持ちよいと思える。
またインテリアでは、専用に設えたブルーメタリック塗装のパネルや、ステアリングやシートのステッチもブルーとされているところがいい。この辺りが単純に「マニアのためだけ」ではないマニアっぽいクルマになっているといえる。価格は315万円と、装備内容などまでを考えればかなりリーズナブルなものだといえる。
Sportという名前を良い意味で裏切ってくれるだけのしなやかさを忘れぬ滑らかな走り、そして洗練された乗り心地。多分、多くの人ならば、それをATで駆って何の疑問も抱かないはずである。が、しかし、MTで駆ると楽しいのだろうな、と一瞬でも思ってしまった奇特な人は、すぐに手を打った方がいいかもしれない。
確かにこのグレードは、いわゆる「物好き」のためのものであるが、あなたが考えている以上にマニアというのは人口が多いのである。久々に筆が進んでしまったクルマだった。
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