４速へシフトアップする瞬間、どのモデルでもトラクションは一瞬抜けて不安定な状態となる。だから素早くシフトアップを済ませ後はクルマの動きに注意を払う必要があるのだが、ＮＳＸ－Ｒプロトタイプはこの時、非常に頼もしくボディを路面へと押さえつける感じがある。シフトアップする瞬間もどっしりとした安心感が漂う。
ただスロットルをフラットにすることはウェットゆえにできない。しかもプロトタイプの場合は、同じ場所に達する時の速度が頼りも明らかに高く速いからなおさらである。
続く比較的高速のＳ字に対するアプローチでは、ブレーキングの後４速から３速へとシフトダウンし操舵するわけだが、プロトタイプの場合は、まるで切れ味の鋭いナイフでスパッと切るような感じ。手に確かな感触が刻み込まれる感じなのである。スロットルとステアリングを連携して調節していくＳ字では、ステアリングから伝わるフロントの頼もしい踏ん張り感と、お尻に伝わるリアのトラクション感が違う。最初の左コーナーへ向け操舵すると、ボディがわずかに右に傾き、姿勢が変わっていく。その過程でスロットルを踏んでいくために、トラクションがかかって荷重はリアへ移るため、他のモデルならばややフロントが浮くように感じ、ステアリングフィールも希薄となるがプロトタイプではそれがない。だから２台よりも高い速度で押さえつけていける。おそらくここから先の領域でも、もっと踏んでいくことができるだろう。綺麗にリアに弧を描かせて姿勢を変えていくことも可能なはずだ。
タイプＳは切り返す時に、初期の姿勢変化こそ鋭く感じるがステアリングフィールやその後の動きなどはマイルドに感じられる。さらにその後ボディの動きが大きくなり、姿勢は乱れるように崩れる。しかし、このマシンでは実に高い速度を保ったままスライドすら感じさせず、確かな手応えのまま逆向きの力へと変えていく。もちろんタイプＳのように引き込まれるようなオーバーステアもない。
