正直、かなりビビっていた。
なぜなら目の前にあるのは、10年ぶりに復活を果たそうとしている伝説のマシンなのだ。それだけで気持ちは波立つのに、そこにあるのはなんとプロトタイプである。当然世界に1台しかない貴重なもの。価格など付けられる代物ではない。もし価格を付けるとするならば、それは市販車の価格よりもひと桁違うという。それを今から走らせるのだ。
世界に1台という貴重なマシンを試乗できるという大きな喜びもあるのだが、残念ながらそれは、ボクの人生の中で最も大きいだろうプレッシャーに押しつぶされた。さらにもう一つプレッシャーとなる理由が。なぜならコースは、雨で黒く光っていたのである。
まず初代NSX-Rに試乗、その後現行タイプSに試乗する。ミッドシップのマシンに乗ってウェット路面でグリップを確かめながら走る感覚というのは、ボクにとってはまるで氷の上を走っているようだった。
恐る恐る、ひとつひとつの操作を確かめながら非常に丁寧なつもりで操作していく。なぜなら少しでもラフな操作をすると、初代NSX-R/現行タイプSはともに即テールを外にズルリと滑らせるからだ。
そしていよいよ、NSX-Rプロトタイプを試乗する時が来た。