R32から始まりR34までで構築された、懐かしく男臭い味付けからすれば、それでもまだ無臭に近いと感じる人もいるだろうが、GT-8は確かに、ほんのりとした「香り」が新たに感じられるものになっていることに間違いはない。
それだけに汗を流しつつ格闘した記憶のある20世紀のスカイラインたちと比べると、刺激は確実に少ない方だといえるだろう。しかし、単純に刺激の有無をしてスポーツとするのではなく、常に漂う確かさの上であらゆる動きを把握するという、気持ちよさにつながる世界がそこには感じられたのだ。
不可能ではあるが、もし目に見えるものや先入観を全て廃し、走りの味わいだけで比べたとき、例えばBMWとの間に、それほど大きな差は生まれないだろう。むしろ「走り味」の好みでいえばこのGT-8を選択する人は意外に多いかもしれない。
ただ実際には、目に見えるものや先入観を全て廃することができないからこそ、「ブランド」というものの持つ意味は大きいような気もする。しかし、それを一番良く分かっているからこそ、あえて宮内氏は「ブランド性」と謳ったのだともいえる。なぜなら「価格が違いますから」と、最初からさじを投げるようなエンジニアは、作り上げるクルマに言葉ではないエモーショナルを込めることは決してできないからだ。