ではGT-8の走りとはどんなものなのか? 言ってみればそれは、未だ構築中のブランド性を抜きにすれば価値ある部分が確実に生まれつつあるというところだろうか。3.5Lという大排気量を「あえて」選んだのは、新たな価値観を提案するためである。兄弟車ステージアで採用した280psの2.5Lターボを搭載しなかったことは、つまりスカイラインというブランドにおいて、新たな走りの世界を提案するという静かな主張の現れである。
注目の8速のマニュアルモードを備えたエクストロイドCVTは、変速時間コンマ2秒と短いわけだがこれはCVTだから当然といえば当然か。8段という数字にも圧倒されるがそれもCVTだけに任意で段数を設定できるだけに、よくよく考えると驚くほどではないといえる。ただし、ステアリング裏に与えられたパドルシフトの評価は絶大だといえる。
この形状、感触、配置は現存のパドルの中で随一といえるほど優れたものである。フェラーリF360モデナF1もマジで及ばない。
またパドルを固定式としたことも高評価できる部分である。F1とは違いロック・トゥ・ロックが大きく、操舵時にステアリングから手が離れる乗用車の場合は、この方式がもっとも操作しやすい。
CVTベースのマニュアルモードだけに、操作感は存分に楽しむことができるが、自身がギアを直接選んでエンジンをコントロールしているといったMTの感覚にはさすがに及ばないのは致し方ないところだろう。ただそれも、MTを目指したのではなく、あくまで新たなスポーツの世界に華を添える物としてみれば納得がいくものである。
シャシーも個人的には注目の部分だった。つまりここで、ノーマルとの違いをどのように表現し、さらに新たな価値観を築くかに興味があったのである。ノーマルは穏やかで滑らかなクルマの動きと、クイックなステアリングの組み合わせによってややチグハグな感じが否めなかったが、パワステ特性の見直しやタイヤの変更などによって、大分自然な感じを取り戻している。それでいて姿勢変化に対しては適度な締まりを与えつつ、乗り心地も悪化させていないところがいい。結果的にそのハンドリングはコントロール性がより高いものとなり、ノーマルでは薄かった、クルマの動きの過渡域を堪能できる味付けとなったのである。