スカイラインにとって、既に伝説と化していた「GT-R」というモデルが、16年ぶりについに復活したということさえも、もう伝説になりつつあるほどの時間が経過した。
GT-Rにとって、第二の人生となった今回の旅は、最初の人生よりも遙かに長い。自動車の世紀といわれる20世紀の最後を見届け、21世紀さえ迎えた。R32、R33、R34……振り返れば、それは常に確固たるものを持って、そこに在った。世界のどのクルマにも似ていない、このマシンにしか持ち得ないものを、常に磨き続けてきた旅だった。時に嘲笑や罵声の種になるようなこともあったが、そんな時はじっと黙って実力を磨き続けてきたクルマだった。
2.6リッターの排気量を持つ直6DOHCツインターボエンジンから発せられる力を、4輪に配分して駆動するという、およそスポーツカーとはほど遠いレイアウトを採用しながらも、このマシンは非常にピュアな感覚を、あらゆる部分で表現することに成功している。
だから非常にいかつく、だが静かに息を潜めて何かに飛びかからんとするその姿は、やはり伊達ではない。あらゆる自動車が洗練という言葉をものにした感さえある現代では、やや仰々し過ぎるとさえ思えるその鎧のようなボディも、実はロジカルなものなのだ。
レーシングカーのようなカーボン製ボンネット、ディフューザー……それぞれが、機能に裏打ちされた意味あるものである。例えサーキットを走らずとも、全ては世界最強のロードゴーイングスポーツカーにとって必要なものなのだ。むしろ、まだ足りないくらいかもしれない。GT-Rの精神的なモチーフともいえる、ポルシェ959のそれに比べたら…。
改めて触れるとやはり、意味あるものが与えられたマシンだからこその、極めて純度の高い、センシティブな部分がそこかしこに溢れていると分かる。それは他の280psカーでは決して味わうことのできないもの。
おそらくGT-R以外にそれを実現している国産スポーツは、ホンダNSXだけであろう。感触はあくまでも重厚で、かなりの手応えを伴ったものだ。RB26DETT型ユニットには、直6ならではの回転バランスの完全性から来る、身がぎっしりと詰まった凝縮感と精緻な感覚、それがゆえに研ぎ澄まされたサウンド、そして6連スロットルならではのリニアなレスポンス、ツインターボによる圧倒的な力感などが混じり合うことで、深みさえ感じる味わいがにじみ出ている。
ただ単にパワフルなだけでなく、ただ単に気持ち良いだけではない、両方を備え、かつ実感のこもったユニットとしてそこに在る。ゆえに6速MTを使ってそれを扱う時、RB26DETTは単にエンジンとしての仕事をするだけに留まらず、それを操る者のハートを震わせる。