
フロント/セカンドシートとセカンド/サードのフラットモードなどのシートアレンジが可能だが、アレンジ機能を数で評価すれば意外と貧弱である。しかし、使う頻度が高い、つまり現実的な使い方に的を絞り、使いやすさを重視した設計は高く評価したい。可能性ばかり高めても、使いやすくしなければ無用の長物。使う人の気持ちを汲んだ設計こそ、使い勝手がいい、と言えるのだ。
使い勝手といえば小物収納も気になる点。最近のミニバンらしく数も容量も充実している。ただ、操作リーチや視認性はあまりよくなく、未だに使い勝手よりも空き地利用のスペース効率型設計の感が強い。この辺りはミニバン全体、さらには乗用車全体の課題のひとつでもあり、プレサージュの欠点とすることもないのだが、乗降性やシート機能の気配り設計並みの配慮は欲しかった。

ぱっと見て、凄いなと思わせる部分はない。醒めた目で見れば「ソツなくまとめた」なのだ。そこが偉い。ソツのなさ、つまり「嫌な部分なく自然体で使える」は5年とか7年とか長くつき合うクルマには極めて重要である。ところが、そういう良さは大概は地味で、あまりセールスバリューにならない。だから、購入意欲を刺激する「凄いと思わせる特徴」が優先されることも多い。そこであまり使わないような機能に「凄さ」テンコ盛りにしたりする。一昔前のミニバンのシートアレンジが、その最たる例だが、ユーザーの現実と乖離した「凄い」などさして意味はない。ここが、新型プレサージュのインテリアを考える上でのカギ。売るための魅力よりも使う人への魅力を優先するという、まことに当たり前のことを真面目に考えて開発したクルマなのだ。