気配り設計はシート機能全体に及び、サードシートの収納は荷室側のリングを引っ張るだけで、座面が跳ね上がり、そこにバックレストが倒れ込む。また、跳ね上がった座面はセカンドシートを前方にセットすれば完全にフラットな状態にできる。大きな荷物を積むことが多いドライバーはセカンドシートの収納ができないのが気になるだろうが、サードシートを完全に収納した状態の荷室容量は一般的なバンの後席を畳んだ状態と等しく、ふつうの使い方でこれ以上の広さは不要である。また、セカンドキャプテン仕様ということで、フロント/セカンドシートの間を利用すれば室内長に近い長尺物の積載も可能だ。
フロント/セカンドシートとセカンド/サードのフラットモードなどのシートアレンジが可能だが、アレンジ機能を数で評価すれば意外と貧弱である。しかし、使う頻度が高い、つまり現実的な使い方に的を絞り、使いやすさを重視した設計は高く評価したい。可能性ばかり高めても、使いやすくしなければ無用の長物。使う人の気持ちを汲んだ設計こそ、使い勝手がいい、と言えるのだ。
使い勝手といえば小物収納も気になる点。最近のミニバンらしく数も容量も充実している。ただ、操作リーチや視認性はあまりよくなく、未だに使い勝手よりも空き地利用のスペース効率型設計の感が強い。この辺りはミニバン全体、さらには乗用車全体の課題のひとつでもあり、プレサージュの欠点とすることもないのだが、乗降性やシート機能の気配り設計並みの配慮は欲しかった。
ただ、インパネ周りの収納スペースをリッド付きとして、見栄えの向上を図っているのは評価できる。機能が表に出過ぎると道具的な殺伐とした印象が強くなる。それが個性になるクルマもあるだろうが、ちょっとリッチに楽しむプレサージュならば、やはり豊かさとか洗練された味わいが必須。機能的な不満はあるものの、全体的には前向きな設計といえる。
ぱっと見て、凄いなと思わせる部分はない。醒めた目で見れば「ソツなくまとめた」なのだ。そこが偉い。ソツのなさ、つまり「嫌な部分なく自然体で使える」は5年とか7年とか長くつき合うクルマには極めて重要である。ところが、そういう良さは大概は地味で、あまりセールスバリューにならない。だから、購入意欲を刺激する「凄いと思わせる特徴」が優先されることも多い。そこであまり使わないような機能に「凄さ」テンコ盛りにしたりする。一昔前のミニバンのシートアレンジが、その最たる例だが、ユーザーの現実と乖離した「凄い」などさして意味はない。ここが、新型プレサージュのインテリアを考える上でのカギ。売るための魅力よりも使う人への魅力を優先するという、まことに当たり前のことを真面目に考えて開発したクルマなのだ。
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