
これだけ大きいと気になるのは走りである。因みに、前身モデルのグランビアのガソリン車は3.4リッター。アルファードで同じV6を搭載したモデルは3リッターである。FFの採用により車重が軽くなったとはいえ、このクラスでの排気量減なら、動力性能低下は心配して当然である。
でも、それは杞憂である。パワーとドライバビリティを重視した乗用車専用設計の新世代V6ということもあり、排気量減のハンデはまったく感じない。それどころか動力性能全般は確実に向上。小さなスロットル開度からストレスない加速を示し、高回転域では息苦しさもない。高速の追い越し、あるいは登坂路でも、外観の印象に似合わず軽く加速していく。中でも印象的なのは小スロットル開度でのドライバビリティ。じわりと踏み込んでいく時の滑らかなトルクの立ち上がりが、ドライビングのストレスを軽減してくれる。間を置いてグッと加速するようなタイプなら、重量を感じさせるが、このタイプは感覚的にも車重を感じさせない。パワーの特性が上品、あるいは洗練されているといってもいいだろう。

これが意外と当たりなのである。同じエンジンを搭載するエスティマの2.4リッター車の出来からすれば、意外ではないのだが、ディーゼルに代わる経済性優先のクルマといった感は皆無。V6車と比較すればパワーに余裕がないのは仕方ないが、打てば響くような4気筒特有の小気味よいドライブフィールが、V6車とは一味違った活発な印象を与えている。洗練感で比較されると、さすがに厳しいのだが、必要にして十分な動力性能もあり、静粛性やパワー、あるいは「最上級クラス」という車格に、特別強いこだわりがなければ4気筒車でも不満はない。
さて、ここまでは絶好調のアルファードだが、フットワークの出来については多少疑問も残る。最重量級のFF車ながら、ステア操作による素直なラインコントロール性を実現し、急激な挙動変化あるいは方向性(ヨー)の変化を抑えたハンドリングは高く評価できる。もう少し違った言い方をするならば「腰が座っている」「重心が低く感じられる」「安心感のある」などなど、なのだ。

誤解されるといけないので、付け加えておくが、操安性重視で乗り心地を犠牲にした、というのもちょっと違っている。確かに操安性の向上は要点のひとつだが、グランビアがそうだったように、アルファードも定員乗車での乗り心地と操安性を配慮したサスチューニングを採用する。定員乗車で、しかも定員分の荷物を積載した状態では、酷く後輪荷重が大きくなるが、この状態でも安心に走れるハンドリングと落ち着いた乗り心地を確保するためのサスチューニングでもある。