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佐藤琢磨も挑む、インディ500とは?(3ページ目)

世界最大の自動車レース、インディ500を学ぼう!今年のインディ500には元F1ドライバーの佐藤琢磨も参戦。100年の歴史をもつ「インディ500」とは一体どんなレースなのか、分かりやすく解説します。

辻野 ヒロシ

執筆者:辻野 ヒロシ

モータースポーツガイド

女性ドライバーが5人出場!

ここからは今年の「インディ500」の話題をいくつかご紹介していきましょう。「インディカー」はダニカ・パトリックを筆頭に女性ドライバーが活躍していることでも有名ですが、今年は「インディ500」に史上最多5人の女性ドライバーが挑みます。

その中で最も実力派はやはりダニカ・パトリック。ルーキーイヤーでいきなりトップを快走するという「インディ500」における女性ドライバーの歴史を変えた彼女にとって、今年は6年目のチャレンジ。昨年は3位に入っていますし、今年は女性初の優勝を期待したいところなのですが、今年のダニカはNASCARとのダブルチャレンジでインディの成績は今ひとつ。今年がラストの「インディ500」になるかもしれません。
ダニカ・パトリック【写真提供:本田技研工業】
女性ドライバーといえば今年は注目のルーキーがいます。「HVMレーシング」から参戦するスイス人、シモーナ・デ・シルベストロです。彼女は2006年からアメリカのレースで腕を磨いており、2009年はフォーミュラ・アトランティックで4勝をあげ、今年から「インディカー」シリーズにデビューしました。開幕戦からルーキーらしからぬ派手な走りを見せ、テレビ中継にも度々映し出されるなど面白い存在です。

しかしながら、今年は5人が予選落ちを喫する厳しい戦いですから全員がグリッドに並べるとは限りません。ダニカ・パトリック、サラ・フィッシャー、ミルカ・デューノ、シモーナ・デ・シルベストロ、アナ・ビアトリスの5人の女の戦いにも注目です。

日本人ドライバーの活躍は?

「KVレーシング」の佐藤琢磨は復刻版の「ロータス」カラーでレースに挑みます。
【写真提供:本田技研工業】
注目されるのが佐藤琢磨の初「インディ500」です。今年は「インディカー」シリーズの前半4戦がオーバルコースではなかったため、オーバル挑戦の経験が少ないのがネックです。さらに佐藤は開幕から5戦連続で完走できていませんから、インディカーの戦い方を知るまでもなく、この難しいレースに挑戦しなければならないわけです。

しかし、ポジティブな要素もいくつかあります。まず初のオーバル挑戦となった第5戦カンザス(1.5マイルオーバル)では予選でチームメイトのマリオ・モラエスに勝ったことは非常に大きいと思います。もちろんルーキーの中ではトップでしたし、これは佐藤琢磨の順応性の高さとモチベーションの高さを表しているものといえます。

さらに、実は佐藤の所属する「KVレーシング」はオーバルでも速さを見せていることです。昨年の「インディ500」ではマリオ・モラエスが2列目の4番グリッドを獲得していますし、セッティングが決まれば佐藤琢磨の上位グリッド獲得も夢ではありません。さらに「KVレーシング」はモラエス、ヴィソ、佐藤の3人のレギュラーに加えて、インディ500だけは名手ポール・トレイシーも加入し、4人体制でレースに挑みます。

今年の「インディ500」はスケジュールが短縮され、練習走行の時間も短くなっているので、4人でデータを共有できる大所帯チームは有利。特にルーキーの佐藤にとっては、ハイスピードオーバルに慣れることに集中できるのは大きなアドバンテージになるでしょう。
「ニューマン・ハース・ラニガンレーシング」の武藤英紀
チーム名のニューマンとは映画俳優の故ポール・ニューマン氏のことで、生前はレースに情熱を燃やしたレーサーでもあり、チームオーナーでもありました。
【写真提供:本田技研工業】
一方で孤軍奮闘を強いられるのが武藤英紀です。彼は既に2度「インディ500」の経験がありますから全くその辺りは問題がないのですが、彼の所属する「ニューマン・ハース・ラニガンレーシング」から出場するのは武藤だけとなります。

同チームは名門なのですが、今年はメインスポンサーのマクドナルドを失い、エースのグレアム・レイホールを出場させることもできなくなりました。シーズン途中からレイホールの復帰も噂されていましたが、彼は父親のチーム「レイホール・レターマン」から「インディ500」に出場することになりました。4台体制、3台体制のチームと比べると武藤が1人でやらなければならないことは膨大で、大きな負担となります。しかし、彼は自分の力でインディカーのポジションを築いてきた逸材。ハートの強さで上位走行を実現して欲しいところです。

今年、ミルクを飲むのは誰か?

「インディ500」では、ウイナーはシャンパンファイトをするのではなく、ミルクを飲むのが伝統。ミルク飲みでまたスポンサーから賞金が出ます。
【写真提供:本田技研工業】
「ルーキーの女性ドライバー、ダニカがトップを快走」したり、「初挑戦のモントーヤがいきなり優勝」したり、「アンドレッティ親子の悲願の初優勝が最終ラップの僅差で打ち砕かれた」りと、伝統の「インディ500」はいくつものドラマを演出してきました。

昨年もシーズンオフに浮上した脱税疑惑で監獄に入れられていたエリオ・カストロネベスが、無罪となり復帰した「インディ500」で優勝を飾り、ドン底からの大逆転にアメリカ中が感動しました。こんな出来過ぎなくらいのドラマが当たり前に生まれるのが「インディ500」です。誰かが台本を書いているわけでは当然ありません。でも、そういったドラマが現実に起こってしまう。これがまさにアメリカンモータースポーツの面白さです。

その要因となっているのはドライバーやレースに関わる人々のハートによる所が大きいでしょう。大観衆の熱気、そして全米が注目する1戦であること、さらには高額な賞金と優勝によって得られる巨大な名誉もうまく作用しているかもしれません。
「インディ500」は息もつかせぬ高速バトルの連続
【写真提供:本田技研工業】
最近は情報ソースが増え、モータースポーツもデータを頼りに見るスポーツと化しました。F1ファンやモータースポーツマニアの方にはデータやタイミングモニターを頼りにレースを楽しむ人も多いと思います。それと同時にデータだけでレースがある程度予想できてしまうレースファンも増えています。しかし、「インディ500」だけはどんなに勘のいい人であっても、このドラマチックな筋書きをデータを頼りに予想することは難しいと思います。人間が作り出す巨大なパワー、それを期待する人々の心があってこそ成り立つからです。そういう意味では、「インディ500」は新鮮に感じてもらえるレースではないかと思います。

伝統の「インディ500」の視聴方法は2つ。CS放送の「GAORA」で決勝レースの生中継が行われます。さらに英語サイトですが、「インディカー」の公式ウェブサイトの「Indycar Race Control」では予選、レースの模様が生で、無料で配信されます(実況はIMS Radio Networkの英語音声)。決勝レースは日曜日から月曜日にかけての非常に深い時間帯で、月曜日の仕事を考えるとなかなか生で見れない人も多いと思いますが、眠い目をこすって頑張ってみれば、海の向こうアメリカ・インディアナポリスで展開される「インディ500」のスペクタクルに大興奮してもらえることでしょう。

寝不足と興奮しすぎで月曜日が仕事にならないのはもう割り切ってください!





【関連リンク】
インディカーを全戦放送する「GAORA」公式サイト

インディ500公式サイト(英語)

【本田技研工業】 インディカー情報サイト


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