医療ケアが整えばすべての命が救えるのか
ひとりひとりの健康意識が大切 |
正常産はお産全体の約8割と言われています。では、異常産と呼ばれるケースが2割もあるかといえば、明らかに最初から計画帝王切開が必要な方はそこまで多くはありません。血圧や血糖値や感染症にならないようにマイナートラブルを改善して、健康度を高めていくことが必要です。
また、たいへん悲しい現実ですが、妊婦死亡率が低い日本であっても、毎年出産する100万人の妊婦さんのうち、約60人の方が亡くなっています。赤ちゃんも、誕生死といわれる出産当日の自然死が1000人に1人といわれています。これはある意味で、私たち生命の本質であり、すべてを未然に防ぐということは不可能なのです。救えるものを救わないで放っておくという医師はいないのです。
今回お亡くなりになった方の夫は、犯人探しをするわけでなく、医療システムの改善に一石を投じた母親の存在を子どもに伝えたいという成熟した発言をなさっていました。
連絡網のネットワークもそうですが、確かに土日に当直医が1人、しかも研修医という体制は改善されるべきです。私の実感ですが、平日よりも週末にお産が多いように思えます。助産院に努めていたときも、土日の出産はとても多かったのを覚えています。土日は夫が休みということもあり、妊婦さんも気がゆるみやすく、陣痛が始まりやすいのではないでしょうか。
セルフケア意識を高めることの大切さ
高齢出産にこれからチャレンジする方にとっては、「高齢出産はリスクが高いから、今回のようないざというときに、受け入れてもらえなかったらどうしよう」という心配もあるかとは思います。まず、こうした緊急事態は、高齢出産だから高いというデータが出ているわけではありません。単純に「高齢出産=ハイリスク」とみなされる場面もありますが、実際は個人差によるものが大きいのです。もちろん、人間の体は20歳のときよりも35歳、40歳となるにつれて血圧も上がりますし、エイジングを重ねているという事実はあります。
だからこそ、高齢出産を望んでいる女性は、2倍、3倍のセルフケア意識を高めて欲しいと思います。今回の事態で私が気になったのは、「NICUが満床だから受け入れができなかった」という現実。この少子化の時代にNICUが満床ということは、早産などによる低体重児が増えているということです。
これは妊婦さんが、低体重児のリスクであるタバコは止める、健康度の高い食生活を送る、適度な運動と休養をバランスよく取るといったことで防げる可能性が大きいのです。
できるだけグレーゾーンから脱するという気持ちで健康意識を高めて欲しいと思います。それは自分自身のためであり、「NICUのベッドをひとつでも開けておいてあげられるように」というお互いの支え合いにもつながります。セルフケアをしっかり行えば、おのずと自信が生まれてきます。何事にも過信は禁物ですが、まずはやるべきセルフケアを日常的にこなし、きちんと自信を持つことが、リラックスしたお産へつながることを信じていきましょう。