受け入れ拒否ではなく、受け入れ不可能

受け入れ拒否でなく、受け入れ不可能
産科医不足は大きな問題
妊婦の救急搬送が要請されたにもかかわらず、比較的医療体制が整っていると思われていた都心で、要請先での受け入れ不可能という返事が重なってしまった問題について、「妊婦たらい回し問題」として、マスコミでも連日報道されました。今回はこのことについて書きます。

この「たらい回し」というキーワードですが、医療やお産の現場に詳しい方でなければ、病院側が一方的に受け入れを拒否したかのような印象を持たれてしまうかもしれませんが、それは違います。病院は「受け入れ拒否」をしたわけではなく、搬送されてこられたとしてもケアをする体制が取れず、やむなく「受け入れ不可能」という事態となってしまったのです。

であるなら「もっと医師を増やせばいいのではないか」ということになります。産婦人科医の不足は、現在お産の現場で大きな問題になっています。今回の墨東病院も、昨年末に産科の常勤医1人、今年6月に研修医1人が退職し、医師が計6人となったため、7月から土日と祝日のセンターの当直医を本来の2人から1人に減らし、周辺の病院に週末の受け入れの協力を求める文書を配布していたそうです。

周産期母子医療センターである施設の71施設のうち、37%の26施設が医師不足で夜間など当直医が1人だという報道もありました。

産婦人科医の待遇改善が早急に必要

産婦人科医不足の問題に関しては、研修医制度に関することなどの、さまざまな策が求められますが、まずは医師の待遇改善が必要だと思います。

お産は昼夜を問いませんので、24時間体制で取り組む過酷な現場であることは、どんな方でも想像できると思います。そうしたことに加えて、産婦人科医は「感情労働」であると私は受け止めています。感情労働とは、自分の感情を抑えてお客様である相手に的確な対応をしたり、ケアを提供したりして働くことをいいます。

看護師や助産師、福祉関係のワーカーなど「対人援助職」の方が、こうした感情労働であるといわれますが、産婦人科医、さらには小児科医なども、感情労働という側面が非常に大きいのです。お産は、性的なことでもあるし、家族的なことでもあるという、非常にプライバシーに関係することですので、そうした面での配慮やケアのための消耗が大きいのです。こうした産婦人科医が背負うものに、きちんとした対価が払われるべきです。

また、産婦人科医と助産師が役割を分担して妊婦を受け入れていく、ヨーロッパ型のシステムも参考になると思います。日本の産院においても、去年だけでも院内所産院が30箇所以上設置されました。今後もこの流れが維持され、正常産であれば助産師、医療介入の必要性があるかもしれない異常産は産婦人科医、という体制のもとで、医師の負担が軽減できていけばと考えます。日本でのライン引きは簡単ではないと思いますが、イギリスでは67%の出産は助産師が分娩担当で、産科医同室の出産が33%という報告を国際会議で聞きました。

さらに、正常産と異常産の狭間であるグレーゾーンの妊婦さんをより正常な健康状態に高めていくためにもセルフケアや出産準備教育も求められていますし、私もその一端を担っていかねばと思いをあらたにしております。