「お産の痛さ」は噂次第?
「お産って痛いんですよね」と聞かされると、余計な心配も増えます…… |
お産に関する「痛い」「つらい」といったネガティブな言葉は巷に溢れていますが、誰もが自分の痛みの体験を面白おかしくデフォルメして、周囲に伝えているからです。体が冷えていたりすれば痛みは強く感じるし、否定していればやはり強く痛みます。今までにない痛みだと言われれば、出産経験がなければ経験値などなくて当然なのに、前代未聞の痛みを想定して待ち構えてしまう……。他者の経験談で脳内イメージが恐怖感に固定されてしまっているがゆえに、痛みを強くしている構図があるのが現代でしょう。
お産は仕事なので、他人の体験談があまり参考にはならない程度に受け止めておかないと、まるでモンスターのように想像の世界で恐ろしいものに成長してしまいます。
お産の素晴らしさについて聞く機会はあったかないかでも、差があります。「本来の身体能力が発揮されたときの命の誕生」を信じる機会がある場合と、自分では何もなす術がないと思い込んでいるのとでも、痛みの強さは違うものに受け止められます。
判断も分析も超えて、うまく子宮が赤ちゃんを押し出していくそのメカニズムの素晴らしさ、生命力の凄さや、原寸大の命の誕生の力を知る人が減っていくのは残念です。講座などで「痛くないほうがよさそうなので、無痛分娩にしたいのですが……」というご質問を受けることもあります。
今回は、無痛分娩でも自然分娩でも、産む人の選択の自由であることを前提の上で、ちょっと最近変わってきた?と感じる無痛分娩まわりのことをお書きしたいと思います。
無痛分娩は「麻酔分娩」のこと
まず「無痛」は読んで字のごとく「痛く無い」と書くのでとても魅力的。無痛分娩と書いて広まっていますが、言うなれば「麻酔分娩」のことです。硬膜外麻酔で背骨から硬膜に針を刺し神経を麻痺させる方法のことですが、その針を刺す時がとても痛かったという人もいますし、麻酔のタイミングや分量の調整が上手くいかず麻酔が効かなかったという人もいます。そのためか初回を無痛で産み、次回は自然に産みたいというママにも全国どこでもお会いします。お産の始まりも、自然分娩は赤ちゃんの肺から分泌される酵素がサインとなると言われていますが、麻酔分娩はいろいろな薬剤の準備があって、陣痛そのものをお薬で起す場合も多いようですから、事前に主治医にメリット・デメリットを聞いておくといいでしょう。
「出産に対する恐れが病的に強い」「パニック障害を抱えている」といったケースなど、麻酔を使った出産も有効なケースもあるでしょうが、WHO(世界保健機関)は誘発分娩はどんな国でも10%を越えるのは不当だと勧告を出しています。とある国立大学病院で無痛分娩を希望したら、「最初からそう決めずに、まずは自然にがんばってみましょうよ」と教授に薦められたという妊婦さんもいました。ただ「痛くないほうがいい」という安易な考えで麻酔出産に踏み切る前に、もう一歩深い情報を探してみましょう。
お産のときに母体がゆるんでおくことは大切ですが、そのアドバイスを間違って捉えて「お母さん自身がリラックスしていた方がいいから」と、そこで麻酔を選択するのは、あまりにもリスクを調べなさすぎです。安心できるお産のための体作りの方に考え方をシフトしたほうが赤ちゃんのためにもよいと思います。