期待される社会からの不妊サポート
技術の進歩とともに、不妊治療を受ける夫婦が増加しています。しかし、不妊治療は身体的、精神的な負担も大きい上に、費用が高額になることも多く、経済的理由から十分な治療を受けることができず、子どもを持つことを諦めざるを得ない方も少なくありません。アメリカでは高額な不妊治療を受けられるのは、民間人の中でも高所得層が中心だそうです。2004年厚生労働省は次世代育成支援の一環として、不妊治療の経済的負担の軽減を図るため、医療保険が適用されず、高額の医療費がかかる不妊治療。1回平均30万~40万円のこの費用の助成をスタート。東京都では夫婦の所得合計が650万円未満の場合、体外受精または顕微授精に対して、年10万円を上限に2年間、助成されます(助成期間は自治体によって多少異なります)。現在は、所得制限を無くすべきという議論が展開されています。少子化の中、産む気持ちが高いカップルを支援する策として、今後も手厚く補助されていくでしょう。
職場に欲しい!こんな不妊&プレ妊娠サポート
政府の次世代育成支援対策推進法の予算を、各自治体がオリジナルにサポートを展開しはじめました。行政から経済的なサポートが得られる一方、企業内にも「不妊有給や治療有給みたいなのがあったらいいのに」という意見もあります。実際の不妊治療は、まず不妊原因を調べる検査とその治療から始まり、その上で、タイミング指導、人工授精、体外授精と段階を進みます。体外授精となると、かなりの回数、長い期間、通院することになり、思いのほか時間がかかります。こうなると、会社をしょっちゅう休むことにもなり、有給では足りない場合あります。企業のサポートもあったらいいのにと思う反面、不妊治療中の事実はあまり周囲に知られたくないというジレンマもあるもの。私のクラスを受講している女性たちからも、風邪などの体調不良でちょっと会社を休んだだけでも、上司や、男性から「いよいよ、おめでた?」と言われて「まだなんです」と答える時に、とても切ないという声をよく聞きます。ちょっと具合が悪いだけですぐに、「おめでた?」みたいに言われるは一種の“妊娠ハラスメント”。「周囲が自分の妊娠をカウントダウンしている状態になると、プレッシャーでセックスもできない」、「なかなか妊娠できなくて、おめでた?と聞かれなくなることにも、あきらめられた感じがして悲しい」という声も。
職場の上司の方や男性は、新婚の女性や妊娠を待つ女性が、体調が悪くても自己申告がないかぎりは、妊娠を話題にしないこと。職場で暗黙のマナーが守られるとき、きっと働くカップルの“おめでた”は早まるでしょう。企業の妊娠出産と不妊サポートはこれからの大きな課題です。世界一、帝王切開の少ない出産先進国オランダでは、不妊治療をうけるにあたっての社会(企業)、医療、経済的なサポートも手厚く、先日来日した研究担当の博士の国際比較研究にも協力しました。日本は出産ケアも20年ほど遅れている国なので、海外のよきモデルを参考にして、ハッピーな夫婦&家族を支えるサポートを増やしていきたいですね。
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All About「不妊治療」サイト
おめでたスタンバイカップルクラス(大葉ナナコ講座)