途上国の矛盾、先進国の矛盾
ジル・グリアさんと記念撮影。出産を先伸ばしにする日本女性の現状を追った『未妊-「産む」と決められない』著者の河合としては、産みすぎる世界のお話は刺激でした。 |
グリアさん 家族計画とは子どもを持つためのものであると同時に持たないための方法でもありますからね。子どもが減りすぎてしまうようなら、そこで重要なのは女性が働きながら出産できるための保証です。つまり父親の育児休暇取得をしっかり推進すること、そして育児休暇をとる人がとらない人に比べて身分や保険の点で不利にならないようにすることです。また、自分の妊娠力はいつまでも同じではなく、30代になれば低下していくという知識が得られる教育が大切ですね。
お話をうかがっていると、出産のリスクは女性が生き物として避けがたく持っているものと、社会の考え方の両方が大きく影響していると感じます。ジルさんは、そのどちらがより大きな要因だと思いますか。
グリアさん それは絡まり合っているものですから、どちらということは大変難しいでしょう。ただ、ある医師はこう言っています。「女性たちは、救う医療サービスがないので亡くなっているというより、むしろ、社会が女性の命を軽んじ、一生懸命救おうという決心をしていないから亡くなるのだ」と。
出産が危険なものであることは先進国でも同じです。しかし途上国では、一回の妊婦健診を受けるだけでも大変なことで、それも先進国の援助でやっと維持されています。日本政府もIPPFに拠出金を出している重要なドナーの一つです。つい最近までは世界一位の拠出額でしたが、残念ながら2005年以降減額されている状態です。
先進国が途上国の女性を助けることの意味は?
日本国民にとって、開発途上国の出産を支援することの意義は何ですか。グリアさん 女性が家族計画を学び、出産で命を落とすことも減り、さらに経済活動にも参加できるようになれば、途上国の経済発展に寄与します。そして日本は貿易で成り立っている国ですから、貿易という視点から見れば、途上国が経済的に豊かになり、途上国の国々が日本のマーケットとなれば、日本にとっても利益があります。日本が途上国を支援することは、日本の発展にもつながることなんです。また、日本の私たちはみな「グローバルシチズンGlobal citizen(地球市民)」の一員ですから一市民としての責任もあると思います。
どうもありがとうございました。
*この記事は国際協力NGOジョイセフ(JOICFP)の協力、写真提供をいただきました。
ジョイセフ広報グループの甲斐和歌子さんからお聞きしたザンビアの妊婦健診の様子は写真をまじえてこちらでご紹介しています。
◆一回受けるのも大変 ザンビアの妊婦健診