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あまりにも軽い命 途上国の妊産婦死亡(2ページ目)

日本でもお産の安全性が問題になっていますが、世界に目を向ければあまりにも簡単に母親が亡くなってしまう国々があります。国際家族計画連盟(IPPF)事務局長ジル・グリアさんにインタビューしてきました。

河合 蘭

執筆者:河合 蘭

妊娠・出産ガイド

避妊も秘密でおこなわなければならない場合も

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これがインプラント。内腕に埋め込むと、ホルモンが少しずつ溶け出して血流に入り続けます。リスクはありますが一度入れれば長期間の避妊効果が得られ、男性に気づかれずに避妊するにはよい方法なのです。
妊婦健診に行けない理由は他にもありますか。

グリアさん お金だけではなくて文化の問題もあります。夫が、妻が自分以外の人間に身体を見せることを許せないのです。ですから、妊産婦死亡の多い国で妊婦健診を広めようとしたら、女性が家族に知られないようにケアを受けられるような工夫も必要になります。避妊も「インプラント」という器具を女性の腕に埋める方法をとることもあります。これは誰にも知られずにできる避妊なんですね。そしてこうしたことはすべて無料でなければなりません。

女性自身が知識を得ることが大切

そうした世界では、妊婦さんたちはどうやって自分の身を守ればいいのでしょう。

グリアさん 大切なのは、教育です。といっても彼女たちは若いうちに妊娠して学校も行けませんので、私たちのような支援団体が性や妊娠のことがわかる青空教室の出前をして、地域の中に教育を持ち込んできました。こうした場に来た女性は避妊の知識やエイズ予防の知識もわかりますし、ステレオタイプな男女の関係もある程度変は変わっていきます。ジョイセフでは、こうした教室をおこなう助産師さんや保健師さんが待ちから遠い地域まで行けるように、自転車を送るという活動をしています。

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自分の初産年齢や子どもの数を決められない社会では、女性は10代から産み始めて40代まで産み続けます。そこには女性が経済活動をおこない、発言権を獲得するゆとりはほとんどありません。 (C)ジョイセフ

女性が自分の妊娠の時期や回数をきめられるということは、どのように女性の生死に影響するのでしょう。

グリアさん 家族計画は、以前は人口爆発を押さえ、食糧危機や環境破壊を防ぐためだけのものだと思われてきました。しかし1994年、国際人口開発会議(ICPD/カイロ会議)ICPDの会議で、女性は出産する時期と子どもの数、出産間隔を自由に決定でき、そのための情報と手段を得ることができるという、基本的権利「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」持っているという概念が国際的に認知されました。

そして、まず第一子を出産する年齢を決められるということが特に重要だということになってきたのです。女性がその決定権を持てば、自分の身体がまだあまりにも未成熟なときに赤ちゃんが生まれるなどということはなくなります。ですから、教育を受けた女性は初産年齢を遅らせるようになります。

第二に、出産間隔と子どもの人数を決められることが重要です。あまりにも子どもの数が多いと、すべての子どもの健康を気遣うことは難しくなり、自分の健康もしかりです。

こうして女性が自分の出産について選ぶ自由を手にするとき、それは人生を選ぶ自由を手にしたことにもなります。子どもの数が減ったとき、女性は自分が前よりもっと教育を受けられるし、もっと健康になれます。そして工芸品を作るとか、畑を耕すとか、何かをして収入を得ることもできるんだということに気づきます。すると女性は地域の経済活動に貢献することもできるようになり、それは女性がその社会の中で地位を向上させることにつながり「病院へ行くな」と言われるようなことは減るでしょう。

それはやがて地域経済の発展にもつながり、国が豊かになることでもあります。こうして考えていくと、家族計画というのは基本的な人権を擁護するために欠かせないことなんです。

>>途上国では、避妊は女性と子どもの命を守るものであり、社会的地位向上への第一歩なのです。今は避妊が常識化した先進国の女性も、かつてはこうして自立への一歩を踏み出しました。>>
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