出産統計から落ちていた救急救命センターの死
驚くべき事実の一つ目は、妊産婦死亡は、実は国の人口動態統計の数値より多かったということです。
妊産婦は、一般の救急救命センターで亡くなることもあります。その場合、医師が妊産婦死亡として届けず、一般の死亡として届けるだけのケースが多いとわかってきたのです。
年間22名もいた「隠れた」妊産婦死亡
2005年に亡くなった出産年齢の女性すべてを調べた厚労省調査「乳幼児死亡と妊産婦死亡の分析と提言に関する研究」によると、妊産婦死亡として統計に上がっていなかった妊婦さんの死は22例に及ぶことがわかりました。
この年、人口動態に載っている妊産婦死亡の人数は62名です。でも実際にはこれより35%も多い84名の妊婦さんが亡くなっていたことになります。
すべての妊婦さんが産科疾患以外の病気で亡くなっていた
22名の死亡のうち、半数近い10名を脳出血が占めていました。継いで心疾患6例、肺塞栓5例、大動脈瘤破裂1例とすべてを間接的産科死亡が占め、いずれも血流、血管に関わる疾患でした。
こんなにたくさんの妊婦さんが、産科では手に負えない病気で亡くなっていました。現代妊産婦死亡は、産婦人科病棟から救急救命センターへ、その主要な場所をひそかに移し始めていたのです。