妊娠の基礎知識/高齢出産

40代で妊娠・出産… 高齢出産のリスクと現実

晩婚化が進み、40代での妊娠・出産も射程距離に入る人がどんどん増えています。高齢出産のリスクは知られてきましたが、実際に30代出産と40代出産の間には、一体どんな差があるのでしょう?ハードル高い高齢妊娠・出産を明るい気持ちで乗り越えるには?

河合 蘭

執筆者:河合 蘭

妊娠・出産ガイド

増える40代での妊娠・出産…高齢出産のリスクと現実とは

40代での妊娠・出産は、実際に30代とどう違うのでしょう?

40代での妊娠・出産は、実際に30代とどう違うのでしょう?


【INDEX】  

40代での出産はどんどん伸びている

出生率が全体的に下がる中、高齢で出産する人の実数は増えています。出生数の伸び率は若い人では下がっていますが、上の年齢層ほど増えているのです。

2017年における全国の統計(厚生労働省「人口動態調査」)を見てみますと、40代の出産は約5.3万(53,551)件となっています。これを約40年前の1980年、40代の方が生まれた頃と比較してみると、何と約7.5倍も増加しています。
 

40代はじめの妊娠力は、まだ30代最後に近い

この年代でもっとも厳しいのは、妊娠率の低下という問題です。妊娠率は30代後半から目立って下がってきますが、40代では一段と下がり、中頃には妊娠はごく稀となります。1年が貴重な時間で、1年前に妊娠できそうだった人が今年はもう卵が反応しないということが起きます。

それでも40代はじめでしたら、40になったからといって劇的に妊娠力が落ちるわけではありません。体外受精も、42歳くらいまではトライする人が多いでしょう。成功率は若い人よりかなり低くて数%になりますが、それでもパッと妊娠してしまう人もいます。数回繰り返した場合の累積妊娠率は、数割にまで上がります。
 

40代半ばの妊娠はスペシャルな妊娠

43歳、44歳となると、たとえ希望は捨てないとしても、夫婦だけで生きていく人生について考えていきたい時期

43歳、44歳となると、たとえ希望は捨てないとしても、夫婦だけで生きていく人生について考えていきたい時期

これが43歳、44歳となると、たとえ希望は捨てないとしても、夫婦だけで生きていく人生について考えていきたい時期です。

それでも決して確率が0ではないわけです。もし、この年齢で子どもを産める人、産もうとする人は、きっと両親も赤ちゃんも特に生命力に富んだ人に違いありません。ただ、とてもスペシャルな妊娠だということです。
 

40代の流産は3割ほど

40代は流産も増えますから、もしかしたら、せっかくの妊娠がそうなってしまうかもしれません。40代ともなると、出産できた人も、聞けば一度か二度はそういう経験を経ている人が多いようです。

流産はショックを受けますが、40代に限らず若い人でもあることで、日本産婦人科学会のホームページでは「医療機関で確認された妊娠の15%前後が流産になる」とされています。まして40代となれば受け容れなければならない、自然の宿命です。

体外受精で妊娠した人のデータを見ると、流産は30代半ばから増えてきて、40歳では3割くらい。45歳になると6割を超えます(「日本産科婦人科学会 ARTデータブック」より)。流産の原因のほとんどは赤ちゃんがもともと持っている染色体異常で、防ぎようがありません。
 

40代は染色体異常の発生率が高くなる

また、無事妊娠が成立したあとも、赤ちゃんの染色体異常が心配になるかもしれません。何らかの異常を持つ赤ちゃんは意外に多くて、私が『出生前診断 出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』を書いた時の取材で胎児疾患に詳しい医師、遺伝カウンセラーたちにたずねたところ、ほとんどの専門家が「全年齢で見て3~5%」と認識していました。

ただ、その中でダウン症候群は特に加齢の影響を受けやすいという特徴があり、発症率はさまざまな報告がありますが、例えば『周産期遺伝カウンセリングマニュアル』という専門書によると40歳では84分の1(出生時)という数値が記されています。羊水検査はさまざまな染色体の異常がほぼ正確にわかりますが、せっかく妊娠した命を大切にしたいと思うものだし、検査には流産のリスクもありますので、多くの人がとても迷います。

2013年から始まったNIPT(新型出生前診断)は、血液検査で流産の心配がない検査です。陽性と出ても確定診断にはなりませんが、羊水検査を受けたいと考えたら、この流産の心配がない検査を受けてみるのもひとつの選択肢です。胎児超音波の専門医に診てもらう方法もあります。まずは「遺伝カウンセリング」を受けてみましょう。
 

40代の妊娠・出産に対して、心の中で不安を大きくしないで

40代の妊娠生活は、こうしたハードルをクリアしていくことになります。そのためか、傍目には元気そうにしていても、やはり心の中では不安の大きい方が多いようです。

でも、心配しているときりがありません。妊娠できて流産もなかったらそれだけの力が赤ちゃんにあったということで、問題なく産めてしまう可能性も大いにあります。悪い未来ばかり想像するのは意味がないことです。明るい気持ちで40代出産を乗り越える人は、自分に自信を持つようにしている人です。

さて、お産はどんな感じになるのでしょうか? 今回書いたことについては、40代初産の人も経産の人も同じです。でも、お産については差が出ます。神奈川・湘南鎌倉総合病院で40代出産の方を調べたデータを「40代でも自然に産めるの?」でご紹介していますのでぜひご覧ください。

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【参考サイト・書籍】
cover

卵子老化の真実 (文春新書)

 
 
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