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「産科受難時代」を生き残る病院とは?(2ページ目)

神奈川県鎌倉市には、今、出産できる施設がひとつしかありません。その病院の井上裕美先生と長谷川師長さんにお話しをうかがい、この産科医不足時代に生き残る病院の条件を探ってみました。

河合 蘭

執筆者:河合 蘭

妊娠・出産ガイド

新しく来てくれる産科医を探して全国行脚


井上 個人開業の先生は、ひとりでしていらっしゃる方が多いので大変なんですね。休む暇もなく神経を使う仕事ですから、年齢が高くなるとだんだん耐えられなくなります。自分の人生に少しはゆっくりできる時間を作りたいと、分娩は50歳くらいで早々と引退しようかということになります。医療訴訟が起きて、そこでぱったりとやめた方もいます。病院は、医師数が確保できなくなったというところが多いようです。

河合 こちらの病院でお産が増えすぎて大変ではありませんか。

井上 少し前はそういう状態でしたので、就職ガイダンスのような展示会に出展して、若手医師に積極的にこえかけをしました。私も沖縄までブースを出しに行きましたよ。そしてありがたいことに今は医師が増えて8名になり、落ち着きました。

河合 医師数が足りない時期は、どのように大変だったのでしょうか。

井上 医師は人数も大切ですが、特に大変だったのは、コミュニケーションがとれる医師がそろえられないことでした。患者さんに優しく接しよう、ちゃんと顔を見て話そうという態度がない医師がいると、患者さんから絶えず不満が出ます。そうすると流れがいっそう悪くなり、時間がたくさんかかります。
 でも、そんな時期にも、嬉しい光景に出会えて励まされました。若い研修医が成長していって、もう帰ってもいい時刻なのに「今晩は忙しくならそうだから」と医局に残っているのを見たときは、疲れが吹っ飛びました。それから、婦人科の年輩の患者さんたちは、ジーンと来ることを言ってくれるのですよ。私が「お大事に」と言ったら「先生もお大事に」と言われたり、「先生は、お昼食べたんですか?」と言ってくれた人もいました。

医師1人では決して支えられない


河合 そういう瞬間がなかなか得られない人から、産科をやめてしまうのでしょうか。

井上 精神的な面は、必ずあると思います。私たちがお産に取り組むときは、医師ひとりではなくて、他の医師、助産師さんから成るチームで取り組むわけです。チームワークが良ければ、お産が大変な仕事でも乗り越えられます。それから、妊婦さんとそのご家族もそのチームに入ってもらうことが今とても大切です。

河合 妊婦さんと家族は、リスクをしっかりと理解し、自分で決めた方法で出産に臨めばチームの一員となれますか。

井上 そうですね。でも、しっかりとリスクを理解したもらうということは、実際にはとても難しいことなのです。医師は、本当に重みのある言葉で複数の選択肢を説明できるようになるには、悲痛な体験も含めてたくさんの経験を積まなければなりません。

>>どんな場合にもリスクはある>>
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