奈良県の町立大淀病院で妊婦さんの受け入れ先がなかなか決まらず、その妊婦さんが亡くなった事件にショックを受けた方は多いことでしょう。この事件では、出産中に意識を失った妊婦さんの搬送が19病院で断られ、やっと見つけた大阪の病院で脳出血と判明。帝王切開で出産しましたが、お母さんは一週間後に亡くなってしまいました。

「周産期救急」の先進県だったはずの大阪が……

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お産の安心は、すべての人の願い。 <イラスト>平井さくら
奈良県は、全国ではすでに大半の都道府県が整備した周産期センターも作られておらず、搬送の4割が県外に送られるという緊急搬送に弱い県だったようです。厚労省では、10年も前に当たる平成8年から妊婦さんや赤ちゃんの搬送に備えるため「総合周産期母子医療センター」「地域周産期母子医療センター」の整備をするよう都道府県に働きかけ補助金も出しています。その実施をしてこなかった奈良県が、出産の厳しさに目を覚まし、整備にすぐ着手すべきなのは当然のことでしょう。

しかし、私がこの痛ましいニュースを聞いて思ったのは、あの大阪府で、送り先が見つからなかったという事実の重みです。大淀病院は奈良と大阪で病院探しをしました。大阪は、厚労省が周産期センターの事業を始めるずっと前から「産婦人科診療想相互援助システム(OGCS)」という独自に周産期救急のネットワークを作っていて、全国のお手本的存在でした。奈良県が周産期センターを整備しなかったのも、隣にこうした存在があることで依頼心が起きたかもしれないと思います。そんな大阪府でなかなか送り先がなかったのですから、これは簡単な解決はないだろうと思いました。

ベッド数の見直しが必要では?

読売新聞2006年10月28日付け夕刊の大阪本社版によると、同新聞社が調査したところ、受け入れを断った19病院は奈良県が2件、大阪府が17件でした。うち10施設が、搬送の要請を受けた時、ベッドが埋まっていました。このケースでは、母親も赤ちゃんも危険なため、両方の集中治療室でベッドが空いていなければなりません。他の9施設では、赤ちゃんの集中治療室がなかったり、帝王切開など多数の手術を抱えていたということでした。私が個人的に聞いた話では、ある病院では、この搬送を断ったとき、すでに2人の母親について収納する部屋がなくなり廊下待機をしていた状態だったそうです。

10年くらい前に各地で周産期センターが整備されたとき、その地域に必要なベッド数が試算され、センター認定を受ける施設はそれが満たされるように集中治療室の工事をして規模拡大をしたはずです。しかし、その数値が、今の現状とは合わなくなっているのではないでしょうか。

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