抗ウイルス薬と予防注射のリスクは同じくらい
お話しいただいた小島俊行先生 |
もちろん、いろいろな考え方ができます。妊婦さんが、もし予防接種をせず、インフルエンザにかかってしまっても、お年寄りのように死亡率が高いわけではありません。インフルエンザによる妊婦さんの死亡例で知られているものは、肺炎などを併発した方が抗生物質もない時代に亡くなったようなケースです。
インフルエンザには有効な薬(抗ウイルス薬)もあります。発病から48時間以内に服用すれば大きな効果があります。「タミフル」という抗インフルエンザウイルス薬は妊娠中も比較的安全とされ、WHO(世界保健機構)が下した安全性評価は、予防接種と同程度でした。ですから、かかってしまってから対処するのもひとつの手でしょう。
ただ、このタミフルも、1歳以下の子には使えません。また薬は微量ですが母乳中に出るため、授乳中の使用も不安だと考えるのが医師の間では一般的です。授乳中に使えるとされている抗ウイルス薬もあるのですが、授乳を一時的にやめたり、あるいは薬を飲まない自然治癒を選ぶ人もいます。
母親に抗体があれば、赤ちゃんに移行
そのように考えていくと、インフルエンザはやっぱり不安なのです。幼稚園・保育園へ行っているきょうだいなどから、家庭の中にインフルエンザウイルスが持ち込まれるかもしれません。
ですから妊娠中に予防注射をしておくのもひとつの方法なのです。特に、心臓病・ぜんそく・糖尿病など、インフルエンザが悪化しやすい妊婦さんの場合は積極的に考えてよいかもしれません。
予防接種をして感染を防げる率は70~80%で、性能もよくなっています。「人混みに行かない」「手洗い、うがいの励行」といった基本的な予防手段をプラスすれば、さらに感染の可能性を減らせるでしょう。
予防接種を打つ時期は、流行が始まる秋口がベストですが、3月頃まで流行は続きます。流行中の接種も有効です。また、授乳中の接種も可能です。十分な免疫ができるまでの日数は約2週間と言われています。できれば、赤ちゃんに接する家族みんなで受けるのが理想です。
■妊娠中のインフルエンザ予防 3つのポイント
- 妊娠16週以降であれば、予防接種も選択肢のひとつ。
- できるだけ人混みを避け、手洗い、うがいをする。
- 赤ちゃんには家族みんなが接するので、家ぐるみで予防対策。
■統計をひもとくと……
厚生労働省人口動態統計によると、インフルエンザにより、平成15年には8名の赤ちゃん(乳児=1才未満)が亡くなってしまいました。身近な病気ですが、あなどらないようにしましょう。
■新型インフルエンザの予防接種については こちらから。
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このシリーズは、小島俊行先生(三井記念病院産婦人科部長)にご協力をいただきました。
三井記念病院産婦人科