年金

理想の老後を送るには?~田舎暮らし編(2ページ目)

田舎でのんびり暮らす「田舎暮らし」を理想の老後と考える人が増えています。田舎暮らしで年金や医療保険など社会保障にどんな変化があるのかご案内します。

原 佳奈子

執筆者:原 佳奈子

年金入門ガイド

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医療保険はどうなる?

給付内容がほとんど同じでも負担には大きな格差が…
会社員の場合、退職後の医療保険は以下の3つから1つを選択して加入するのが一般的です。
  • 健康保険を任意継続する
  • 家族が被保険者になっている健康保険の被扶養者となる
  • 市区町村の国民健康保険に加入する
※厚生年金の加入期間が原則20年以上ある人は、65歳まで退職被保険者として国民健康保険に加入しますが、保険料の計算や保険給付の内容は一般の被保険者と同じです。

会社員時代の健康保険を任意継続している場合は、田舎暮らしを始めても住所変更の手続きのみでそのまま加入し続けることができます。ただし、任意加入の期限が最長2年なので、任意加入の期限が切れたら国民健康保険に加入しなければなりません。なお、平成21年9月よりけんぽ協会管掌の健康保険は、都道府県ごとに異なる保険料率が適用されるので、けんぽ協会の健康保険を任意継続している人は保険料が変わります。

家族の健康保険の被扶養者になっている場合は、家族と同居しているときは年収要件(60歳以上の場合は年収180万円未満)のみで被扶養者となれますが、別居している親族の被扶養者になるためには一定の要件を満たさなければなりません。田舎暮らしで家族と別居し、被扶養者の要件が満たせない場合は、国民健康保険に加入しなければなりません。

市区町村の国民健康保険に加入している場合、転居後の住所地の国民健康保険に引き続き加入しますが、国民健康保険は市区町村ごとに保険料の計算方法や保険給付の内容が異なります。

それでは、国民健康保険の保険料の計算の仕組みをみていきましょう。国民健康保険の保険料は世帯ごとに以下のように区分されます。
 
【国民健康保険料の区分】
医療分 医療保険の保険料
後期高齢者支援分 後期高齢者医療制度の給付に必要な費用の一部負担分
介護納付分 介護保険の保険料相当分

さらに、区分ごとに4種類の保険料が設けられています。
 
【国民健康保険料の内訳】
所得割 世帯内の加入者の所得の合計応じて計算する
資産割額 世帯内の加入者の固定資産税額に応じて計算する
均等割額 1世帯の加入者の人数に応じて計算する
平等割額 1世帯当たり(人数は問わない)の負担額

65歳以上74歳以下の人は医療分と後期分、40歳以上64歳以下の人は医療分・後期分・介護分の保険料を納付します。保険料の区分のうち、所得割額と資産割額は定率制、均等割額を平等割額は定額制となっています。市区町村ごとに保険料を何箇所か比較してみましょう。
 
【国民健康保険料の負担】
  東京都
H市
静岡県
I市
栃木県
N市
医療分 所得割額 4.3% 4.75% 7.9%
資産割額 ? ? 24.0%
均等割額 22,400円 20,700円 23,000円
平等割額 ? 19,800円 21,000円
後期分 所得割額 1.0% 1.3% 2.0%
資産割額 ? ? 6.0%
均等割額 5,200円 12,000円 5,900円
平等割額 ? ? 6,100円
介護分 所得割額 1.1% 1.8% 2.0%
資産割額 ? ? 7.2%
均等割額 8,000円 5,400円 8,000円
平等割額 ? 5,400円 4,900円

(各自治体とも医療分・後期分・介護分の負担上限額あり)

なお、所得割額の計算に使用する世帯の所得は、所得税や住民税の計算の過程で控除される社会保険料控除や生命保険料控除などは適用されず、基礎控除(33万円)のみ控除されます(東京23区の所得割額は、各区の加入者全員の住民税平均額から計算します)。夫婦2人(65歳未満)の世帯で、世帯の所得が200万円と仮定して、表の3市の保険料を試算してみると、H市が199,200円、I市が258,400円、N市が343,800円となります。N市は、資産割額がさらに加算されます。国民健康保険の給付の内容は自治体によってあまり違いはありませんが、保険料の負担は上記の例のように10万円以上異なる場合があります。

75歳以上になると、医療保険は後期高齢者医療制度の被保険者となりますが、後期高齢者医療制度の保険料は所得割額と均等割額からなります。例えば、上記の3市では以下のようになります。
 
【後期高齢者医療制度の保険料負担】
  東京都
H市
静岡県
I市
栃木県
N市
所得割額 6.56% 6.84% 7.14%
均等割額 37,800円 36,000円 37,800円

(負担の上限額は各市とも50万円)

後期高齢者医療制度の保険料も市区町村ごとに異なりますが、国民健康保険に比べるとの格差は小さい傾向にあります。また、原則75歳以上の人は後期高齢者医療制度の被保険者になるので、健康保険の被扶養者で保険料の負担がなかった人も保険料を負担しなければなりません。後期高齢者医療制度の保険料は原則老齢年金からの天引きですが、希望すれば口座引き落とし(本人以外の家族の口座でも可)も選択できます。

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