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住宅ローンに忍び寄る「二重担保設定」の呪縛(2ページ目)

年金型生命保険の課税方法について、相続税と所得税を課すことは「二重課税」に当たり違法との判決が最高裁から言い渡されました。これまでの常識をくつがえす判決内容です。実は、住宅ローン業務においても「保証料の支払い」と「抵当権の設定」という二重の負担を消費者に課している現実があります。どちらも消費者へのメリットは何もありません。こうした騒動になる前に、解決の道を探る必要があります。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド


保証料を支払っても、ローン利用者が債務免除されるわけではない

「保証料の支払い」と「抵当権の設定」 こちらも事実上、担保の二重取りだ。

「保証料の支払い」と「抵当権の設定」 こちらも事実上、担保の二重取りだ。

マイホームを手に入れようと思った際、大多数の人が住宅ローンを利用します。国土交通省が今年3月に取りまとめた「平成21年度住宅市場動向調査」によると、新築住宅購入者の83.8%が住宅ローンを借りて住宅取得資金を工面していることが分かりました。「マイホームは人生で最も高額な買い物」と言われるように、誰もが現金で一括購入とはいかないのです。

それだけに、いかに住宅ローンと上手に付き合っていくかが問われることになるわけですが、その際、半ば“常識”と化し、誰も疑問に思わなくなっていることの1つに「保証料の支払い」があります。

住宅ローンを組んだことがある人、思い出してみてください。住宅金融支援機構によるフラット35などを除き、多くの民間金融機関が住宅ローンを貸し出す際、保証会社の保証が受けられることを融資条件としています。保証料とは、保証会社に保証人になってもらうための「お願い料」のことです。

なぜ、保証料が必要になるかというと、もし、支払いが滞った場合、返済計画が予定と異なることで金融機関(ローンの貸し手)は債務が履行されないリスクを負うことになります。そのため、こうしたリスクを避けるために、保証会社にリスクヘッジ(債務保証)をお願いします。噛み砕いていえば、万一の際、住宅ローン返済を肩代わりしてもらうために保証料が必要となるのです。

その際、ここで問題にしなければならないのが、「支払った保証料の効果が誰に帰属するか」ということです。常識的に考えれば、保証料を支払っているのは消費者(ローン利用者)ですので、消費者にその効果が帰属されなければなりません。ところが、万が一、消費者が返済に窮しても、ローン返済が免除されることはありません。住宅ローン債権(住宅ローンの返済を請求できる権利)が金融機関から保証会社へと移管されるだけです。

つまり、住宅ローンの貸し主が金融機関から保証会社へ変更されるだけで、借り主側には直接的な恩恵は何もありません。保証料を払わされているにもかかわらず、その利益はすべて金融機関と保証会社に持っていかれてしまうのです。受益者負担の考えに照らし合わせれば、どう考えても理不尽な話です。

保証料を支払わされた上に、土地・建物には抵当権まで設定される

加えて、土地・建物には必ず抵当権が設定されます。抵当権とは土地と建物を担保に取ること。返済が滞った場合に、不動産を強制売却できる強い権利(担保物権)のことです。昨年の秋ごろ、マイホームが競売にかけられる人が多発したことが話題(社会問題)になりました。住宅ローンを滞納したことで抵当権が実行され、強制的に自宅を売り飛ばされてしまったことが事の発端となります。

このように、ローンの利用者は抵当権と保証料の“ダブルの足かせ”を強いられています。どう考えても事実上、「担保の二重取り」といわざるを得ません。


前ページで触れた年金型保険の二重課税問題は、今後、単なる1つの判例の域を超え、社会問題になることが容易に想像されます。税制の見直しはもとより、二重課税された課税分の返還請求が相次ぐことになるからです。野田財務大臣は最高裁判決を受け、法律で税還付が認められる過去5年分については保険受給者が申告すれば還付し、5年を超す分についても法改正などによる救済を検討するとしています。

住宅ローンに関する消費者への“過剰負担”も同様、こうした騒動になる前に、金融機関の自浄作用によって善処することが期待されます。マイホーム市場が市場規模の縮小を余儀なくされる中、当然、住宅ローン市場もパイは縮まざるを得ません。他行との差別化を図るのに「保証料の無料化」は格好の好材料となるはずです。

優位的地位の行き過ぎた利用は、最終的に自分の首を絞めることになりかねません。これからもリテール業務(個人向け業務)に注力するのであれば、なおさら意識改革・業務改善の断行が欠かせません。
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