長期優良住宅/長く暮らせる家

温熱環境から考えると快適な家になる?

南に面した明るいリビングを住宅の理想形と考えている人は多いと思います。果たしてそれが正解なのでしょうか。長く暮らすには、快適な温度を保ち、家の中の温度差が小さいでなければなりません。そこで、今回は温熱環境という視点から快適な家になる間取りを考えてみたいと思います。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド

温熱環境が家の快適性を左右する

みなさんは、自分の家を建てるときどのようにして間取りを決めますか? 家族構成や年齢、日々の生活スタイル、敷地形状や方位、周囲の状況など、間取りを考える要素は多岐にわたります。一般には、それらの要素をリビングや子供室といった各部屋ごとに考慮して、決めているのではないでしょうか。

これらは長い間培われてきた経験のようなものに基づいているので、ある意味で正しいと言えるかもしれません。ただ、今回は、温熱環境というちょっと変わった視点から間取りを考えてみたいと思います。温熱環境が整っていないと快適な家にならないからです。

マンションでも住戸の位置で差が出る

仕事柄、マンションを訪ねることも多いのですが、最近気になることがありました。それは、同じマンションでも、住戸の位置によって温熱環境が一定ではないということです。

同じマンション内でも住戸の位置によって温熱環境にはかなりの差があるようです。これも家選びのひとつの基準だといえるかも

同じマンション内でも住戸の位置によって温熱環境にはかなりの差があるようです。これも家選びのひとつの基準だといえるかもしれません

同じマンションに住むOさんとNさんの例をあげて説明しましょう。7階に住むNさんの住戸は三方の面が外気に接しています。一方、5階にあるOさんの住戸はバルコニーのある面以外はすべてほかの住戸か内廊下に囲まれています。

暑さの厳しいある日、NさんとOさんは連れ立って外出し、一緒に帰宅しました。同じマンションですから、留守にしていた時間も、外気温などの条件もほぼ同じ。それなのに、Nさんの部屋に比べて、周囲が囲まれているOさんの部屋はかなり涼しく感じられたのです。

これまでマンションのような規模の大きな集合住宅なら、住戸が建物のどこに位置するかによって、これほど大きな差になるとは思っていませんでした。NさんとOさんが住んでいるマンションはかなり古い建物で、窓はアルミのシングルガラスですし、玄関ドアも断熱仕様ではありません。ということは、気密・断熱性の高い近ごろのマンションなら、住戸の位置によって、もっとこの差が大きくなるかもしれません。

そして、ふと思ったのは戸建て住宅ならどうなのだろうかということ。1軒の住宅の中でも、方位や、外気に接しているかどうかで、温熱環境には大きな違いがありそうです。次のページでは、一戸建ての温熱環境について考えてみましょう。
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