石川尚の「気になるデザイン」
『原点』こころのデザイン 日本の傑作椅子 写真集14
「空海」という名前が記憶に残る椅子。空海(くうかい)は、平安時代初期の僧侶。「弘法大師(こうぼうだいし)」の名で著名、日本真言宗の開祖である。日本天台宗の開祖最澄(伝 教大師)と共に、日本仏教の大勢が、今日称される奈良仏教から平安仏教へと、転換していく流れの劈頭に位置し、中国大陸より真言密教を もたらした。その「空海」を名にした椅子、まずは椅子をデザインした喜多俊之氏の言葉をご紹介しよう。
……………………………………………………………………………………………………「空海の椅子」という名前は、空海・弘法大師が描かれている絵の中にあった椅子にヒントを得たところからつけました。その椅子を自分なりに解釈して、東洋の椅子の起源というのを考えてみたのです。つまり、西洋の座り方だけでなく、椅子の座で正座したり、あぐらを組んだりできる椅子なんです。
座りやすさというのは、ひとつには人間工学に基づく面があり、もうひとつにはイメージとしての座りやすさがあると思います。(中略)見たときに、「背筋がビシッとして気持ちよく座れそうだ」というイメージを持たせたかったのです。
「空海の椅子」では、東洋からのメッセージというか、椅子に対する考え方の提案をすることで、西洋の椅子のイメージを広げることができたと思います。それは空海が座っていた椅子という何百年も過去に起源を持った、未来的な提案だと思っています。
(引用:別冊商店建築78『日本の木の椅子』,p133,商店建築社発 行)
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