長期優良住宅/長く暮らせる家

高性能の家がすべていい家とは限らない?(2ページ目)

だれもがいい家に住みたいと思っているはずですが、「いい家」とはどんな家でしょうか? 長く暮らすためには基本性能を備えていることが外せない要件ですが、それだけではダメなようです。さて、どんなことのなのでしょうか。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド

物件のスペックには満足だが

家を探していて、インターネットやチラシで「これだ」という物件を見つけ、いざ、現場へ行ってみたらがっかりしたという経験はありませんか? 先日、私が体験したのは、まさにこういう事例でした。

ある分譲住宅を見学するために出掛けたときのことです。目指す物件は25坪の敷地に建つ3階建て。パンフレットには、住宅性能表示制度を活用していると書かれています。最寄り駅から徒歩5分ほどと近く、近所にスーパーがあり、生活もしやすそうな立地。なかなかよさそうな物件です。

しかし・・。実物を見学してみて、私はこの物件は購入しないだろうと思いました。現場を見て「いい家」だとは思えなかったからです。

性能が高くてもくつろげない家は「いい家」ではない?

施工・販売を行う会社はかなり早くから住宅性能表示制度を取り入れているだけであって、住宅の性能面でのスペックには不満はありません。工事中の現場もきれいに清掃されていました。現場監督さんらしき女性もいて、現場にも企業にも好印象を持ちました。

「いい家」の条件としては「住み心地がよい」というのも重要だと思いませんか

「いい家」の条件としては「住み心地がよい」というのも重要だと思いませんか

それなのにこの家を購入したいという気持ちにならなかったのは、「ここで暮らしたいなあ」とか、「くつろげそうな家だなあ」と思えなかったからです。今回の物件は数軒が同時に施工されているのですが、それぞれの家が敷地いっぱいに建っています。もし、このうちの1軒を購入したら、窓を開けるたび、隣家の中をのぞき込むことになりそう・・・。そう思ってしまったのです。

「いい家」とはどんな家なのでしょうか? 耐震性や耐久性が優れていても、そこでの暮らしが快適でなければ「いい家」だと言えないでしょう。この家を買って(建てて)よかったなあと思える家こそ、「いい家」です。毎日我慢を強いられたり、気兼ねしながら生活しなければならないのであれば、快適な暮らしだということはできませんね。

都市の住宅こそ快適性を高める設計の工夫が必要

とはいえ、予算には限界があります。地価が高く、住宅が密集している都市部では、広大な敷地に建つ住宅を求めることが容易でないことは、私も十分わかっているつもりです。それでもなお、居心地のよさやくつろぎは重視したいもの。限られた条件の中でも、快適に暮らせる設計の工夫がほしいところです。

例えば、隣家がすぐ近くに迫っているなら、足元や高い位置に窓を設けて隣家との視線が交差しないようにしたり、坪庭などを設けて外に閉じて、内側に開放したりといった具合でしょうか。同時に分譲する数軒の住戸をすべて同じような間取りにしては、開けられない窓が増えるばかりではないかと思うのです。

このことは、分譲の戸建てだけに言えることではありません。注文住宅のように自分で間取りを決められるなら、周囲の状況を踏まえてプランニングすることが可能です。

家を建てる(買う)ときには、間取りや内外装を気にする前に、基本性能についてじっくり検討してもらいたいと思います。性能は、家ができ上がった後に手を加えてレベルアップすることが難しく、住み心地にも直結する項目だからです。

けれども、そういった性能と同時に、「住み心地がいいなあ」と思える快適な家でなければなりません。その家での暮らしが快適であるためには、基本性能に加えて、住み心地を高める設計の工夫が必要だと思うのです。特に都市部のように制約の多いところではなおさらでしょう。家を考えるときは、スペックや平面図だけで判断せず、そこでの生活を想像して、「いい家だなあ」と思える家を選んでください。


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