年金額の決まり方
モデル年金を貰える人は少数派らしい |
従って、「年金ってだいたいいくら貰えるものなのですか?」という漠然とした、しかし当然聞きたい質問に答えるのは非常に難しいのが日本の年金制度です。その人それぞれの職業や年金の加入状況によって年金額が大きく違ってくるわけですから、一般論として答えるのは限りなく不可能に近いわけです。この複雑さ、不明瞭さが年金不信の一因となっているようにも思います。ある程度の基準みたいなものがないと老後の生活のイメージが浮かびませんよね。
ある程度の「こうなれば、これぐらいもらえます」という基準を、国は国民に示す必要があります。
モデル世帯の年金額とは?
実は国は、ちゃんとこの基準を示していたんです。夫が40年間会社員(厚生年金加入)であった。入社から定年までの月給(標準報酬月額)は月36万円。妻は20歳から60歳までずっと専業主婦だったといういわゆるサラリーマン夫婦を標準的な世帯「モデル世帯」として年金額を示しています。このモデル世帯の年金額を見てみると、
夫、厚生年金 約121万円(月額約10万1千円)
国民年金 約79万円(月額約6万6千円)
妻 国民年金 約79万円(月額約6万6千円)
夫婦で合計月23万3千円となります。 (厚生労働省試算)
国はこのモデル世帯を用いて、「現役時代の平均所得(月約39万円)の6割の年金を約束する」ということを今まで言っていました。現役世代の平均的なボーナス込みの手取り賃金に対する年金額の割合を「所得代替率」と言い、給付水準設定の基準としています。しかし、このモデル世帯の所得代替率について、平成16年改正で約束の割合を「6割」から「5割」に引下げるということになってしまいました。(国は「5割の水準を将来にわたり維持する!」という言い方をしていますが)
5割を約束してもらうのは至難の業?
国は2025年時点の年金の予想額と所得代替率について、このモデル世帯で試算をしています。2025年のモデル世帯の年金額については、国は夫婦で合計月23万7千円となると予想しています。これだけ見ると年金額は増えているわけですが、現役時代の平均所得が月47万円ほどに上昇すると予想しているため、所得代替率は50.2%に下がってしまうことになります。実質的な年金の給付は削減されるということです。削減されるが5割を保証すると国は強調しているわけです。
しかし、問題はこのモデル世帯の年金額を貰うことができるのは、かなりの少数派であると言うことです。現在のモデル世帯の中身を見てみると、平均月給36万円ということは年収ベースでいうなら、ボーナス部分を年4ヶ月として計算し576万となります。会社に入社してから退職までの平均年収が576万円というのは、会社員の中でもかなり高い収入の部類に入るのではないでしょうか?
また、夫が20歳から60歳まで40年間ずっと会社員で、妻が20歳から60歳まで40年間ずっと専業主婦という設定自体、クリアできる世帯少ないと思われます。国が「将来にわたって5割の所得代替率を維持する!」と言っても、5割を維持できる「モデル世帯」はごく少数派であるという矛盾があります。
所得代替率に惑わされないことが大切
夫婦共働きやシングルなど多様な世帯の中で「夫が40年間会社員で、妻が40年間専業主婦という設定」の世帯が最も所得代替率が高いという試算を厚生労働省がしています。確かに夫のみ働き妻専業主婦の世帯と、夫婦共働き世帯を比べると、所得代替率は前者が勝りますが、受け取れる年金総額は後者の方が妻の厚生年金がある分、当然多くなります。老後の年金を考えるとき、国が言う「5割の水準を将来にわたり維持する!」という5割の水準を維持される世帯は実はかなりの少数派であるということ。そして夫婦として年金を沢山貰うという視点で言うと、モデル世帯は決して有利なスタイルではないことをしっかり理解しておきたいですね。
(ちなみに、この減額は既に年金を受け取っている人の年金額が減額されるわけではなく、2025年に新たに年金を受け取る人の給付水準であるということになります。将来年金を受け取る現役世代にツケを押し付けてしまうこのような制度改正は世代間の不公平感を更に助長することになり、大きな問題です。)
【関連リンク】
年金改革に対する小泉総理のメッセージ←「所得代替率50.2%の確保」の言葉が出てきます。
世帯別の厚生年金の給付水準が確認できます