年金の保険料と将来の受取額の関係をチェック!
以前、ある女性から「例えば1年間正社員として働いたら、年金ってどれぐらい増えるものでしょうか?」という質問を受けました。この方は現在専業主婦なのですが、ようやく子育てが一段落したので働こうと思っているとのこと。働くといっても、正社員にするか、パートにするか、どういう働き方をするのがよいのか思案されているようで、その際に年金がどうなるのかも気になるご様子でした。 誰しも「保険料を払って、それが将来の年金額にどのように反映されるのか」は知りたいものですね。そこで今回は、払った保険料と将来の年金額との関係を検証してみます。<目次>
厚生年金に1年間加入した場合、いくら増える?ケーススタディ
仮にこの方(Aさんとします)が1年間会社員として働いた場合、どのくらい年金が増えるのでしょうか。【前提条件】
- 年齢は35歳
- 令和2年9月から1年間勤務で、厚生年金に加入
- 年収240万円(月給20万円、交通費・賞与なし)
- 年金額は、現在の制度で計算(再評価率は考慮せず)
「年収の12分の1×5.769/1000×加入期間(スライドは考慮せず)」
したがって、Aさんのケースで考えると
「20万円×5.769/1000×12カ月=約1万3800円」
つまり年額で1万3800円程増えることになります(計算の便宜上、100円未満の端数を切り捨てしている)。
ちなみにAさんの厚生年金保険料は、毎月1万8300円(平成29年9月~)。これを12カ月払うわけですから、1年間の合計で21万9600円です。
ということは、21万9600円支払うことで、65歳以降に毎年1万3800円を受け取れるとも考えられます。21万9600円÷1万3800円=約15.9、つまり16年近くかかってようやく元が取れる計算になります。
厚生年金だけでなく国民年金も受け取れる
試算結果だけをみると、65歳から支給が始まって、ようやく元を取れるのは81歳。「これでは全然お得じゃない!」って思ってしまいますよね。しかし、厚生年金保険料には、国民年金の保険料も含まれています。国民年金にも12カ月加入していることとなるため、厚生年金に加えて国民年金も増えることになります。
Aさんのように、今まで第3号被保険者だった方は、国民年金の保険料を払わなくても、その期間の老齢基礎年金が受け取れます。そのため、国民年金(老齢基礎年金)が増えるということではありませんが、現在国民年金の保険料を支払っている方については、国民年金の保険料を払わなくて老齢基礎年金が増えることになります。
国民年金(老齢基礎年金)の計算式は「78万1700円(令和2年4月~)×加入期間/480」。今回のケースに当てはめると、「78万1700円×12カ月/480=約1万9500円」となります(計算の便宜上、100円未満の端数を切り捨てしている)。
ということは、年金額は、厚生年金1万3800円に国民年金(老齢基礎年金)1万9500円を加えた計3万3300円程増える、ということになります。そうすると、21万9600円÷3万3300円=約6.6、つまり約6年半で元が取れるという計算になりますね。
※当然のことですが、この金額はあくまで現在の制度を元にしたケーススタディであり、将来の受け取りを保障するものではありません。また、実際に年金を受け取るには、受給資格期間を満たさなければなりません。
パートでの厚生年金加入は収入金額に注意
一般的に「サラリーマンの妻」と呼ばれる人は国民年金の保険料は払わなくてよいことになっていて、しかも老齢基礎年金はちゃんと出るということですから、年金制度では非常にお得な状況にあります。ただし、収入が130万円(今後この金額は下がる可能性がある)を超えると、自分で国民年金の保険料を払わなくてはなりません。国民年金保険料は年間19万8480円(令和2年度)になりますので、先ほどの年収240万円の会社員の厚生年金保険料とそれほど変わりません。
そうすると、基礎年金だけ受け取れる国民年金保険料に比べ、基礎年金+厚生年金が受け取れる厚生年金保険料が「お得」と感じますね。
パートタイマーの社会保険適用拡大の流れが続いています。お得な第3号被保険者も徐々に縮小されていくでしょうから、今後は「パートで国民年金を払うなら、厚生年金に加入したい!」という方が増えるかもしれませんね。
今回のケーススタディの計算金額が多いと思うか、少ないと思うかは人それぞれでしょう。「こんなに少ないのか!」と愕然とした方も少なくないと思います。しかし年金は1年間で劇的に増えるものではなく、あくまでも長期間コツコツと増やしていくものです。そして、そもそも働くことによって収入が増えるということもお忘れなく!
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