今年もあります、「年金改正」。その中身は? |
「年金が変わる?!もうもらっているのに…」~受給者世代の改正
年金を受け取る世代である60代~70代の人を対象とした年金改正で、この4月に実施されるものは
- 65歳からの老齢厚生年金の繰下げ制度
- 70歳以降、働いている場合の老齢厚生年金の調整
それぞれの改正を詳しく見ていきましょう。
- 老齢厚生年金の繰下げ制度
本来65歳からもらう老齢基礎年金を65歳前にもらい始めると、もらい始める時期に応じて年金額が減額される「繰上げ制度」については、一度このサイトで取り上げました(「年金はいったい、いつからもらえるの?」参照)。
「繰下げ制度」とは、その反対で、本来65歳から受け取る年金を66歳以降※にもらうと、遅らせる月数に応じて、年金額が増額される制度です。
この繰下げ制度については、平成14年3月までは老齢基礎年金、老齢厚生年金ともに利用することができました。しかし、平成14年4月から厚生年金保険の加入対象となる年齢の上限が65歳から70歳に引き上げられたため、老齢厚生年金の繰下げ制度は、一度は廃止されました。
今回の改正で、老齢厚生年金の繰下げ制度は復活することになります。以前の制度とは変更点もありますので、詳しい内容を見ていきましょう。
※原則65歳からの年金の支給開始を最低1年間遅らせないと、支給繰下げによる年金の増額は行われません。
- 繰下げできる年金は?
繰下げで増額されるのは65歳から受け取る老齢厚生年金です。60歳~65歳でもらうことができる特別支給の老齢厚生年金(定額部分と報酬比例部分)は、繰下げ制度の対象にはなりません。なお、特別支給の老齢厚生年金を60歳からもらっていたとしても、65歳からの老齢厚生年金の繰下げ制度を利用することはできます(下図参照)。
【退職していた人が70歳で繰下げした場合の例】
また、65歳以降も在職し、厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金をもらっている人は、給与等の額に応じて年金額が減額されています。この「在職老齢年金」の支給対象となる人も、繰下げ制度を利用することができます。ただし、この場合、増額の対象となる年金は、在職による支給停止部分を除いた額になります。つまり、繰下げをしなかった場合に65歳から受け取るはずだった老齢厚生年金額をもとに、増額分が計算されるのです(下図参照)。
【65歳以降在職していた人が70歳で繰下げした場合の例】
- 繰下げによる増額は?
繰下げによる増額率は、老齢基礎年金を繰下げした場合と同じく、「0.7%×繰り下げた期間(上限は60月)」となり、繰下げ期間に応じて算出された額が加算されます。 - 繰下げ制度が選択できるのは?
平成19年4月1日以降に65歳からの老齢厚生年金の受給権が発生する人が対象になります。つまり、一般的には昭和17年4月2日以降に生まれた人は、老齢厚生年金の繰下げ制度を選択することができます。 - 繰下げを選択する注意点は?
以前の繰下げ制度は、「国民年金から支給される老齢基礎年金と合わせて繰下げを行わなければならない」ものでしたが、今回の制度では、老齢厚生年金単独でも繰下げをすることができます。つまり、65歳から老齢基礎年金は普通に受け取って、老齢厚生年金だけを繰り下げるということもできるようになります(上図参照)。
- 繰下げできる年金は?
- 70歳以降も働いている場合の年金額の調整
老齢厚生年金と給与を同時にもらっている場合、年金が減額される在職老齢年金の対象になるのは、70歳まででしたが、平成19年4月からは、70歳以上の人も対象となります。調整方法は、現在65歳~70歳の人に対して実施している調整方法と同様の仕組みが導入されます。具体的な調整方法は以下の図のようになります。
ちょっとキビしい?!遺族年金の改正(次ページへ)