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将来の給付水準~マクロ経済スライドって?(2ページ目)

将来の年金給付水準はどうなるのでしょうか。平成16年の年金法改正で導入が決まったマクロ経済スライドのしくみと将来の年金額への影響などについて解説します。

原 佳奈子

執筆者:原 佳奈子

年金入門ガイド

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これからどうなる?今後の給付水準


公的年金の給付水準が、6割を超えたのは昭和48年の年金改正でした。昭和48年以降の年金改正でも6割の給付水準が維持されてきましたが、平成16年の年金法改正で、給付水準を引き下げることによって世代間扶養を維持しようという考え方が導入されました。

少子高齢化が進む現在では、将来的に高齢者を支える現役世代が減少するため、賃金が上昇して1人が納める保険料が高くなっても、現役世代全体が納める保険料の合計は賃金上昇率に比べて低い伸びになることが懸念されます。そこで、賃金や物価の上昇よりも年金額の上昇を抑えることによって徐々に給付水準を引き下げ、最終的には50%程度の給付水準として将来的な給付と負担のバランスを保っていこうというものです。

平成19年4月に社会保障審議会年金部会から「厚生年金の標準的な年金額(夫婦2人の基礎年金を含む)の見通し」が発表されました。最近の経済動向を踏まえてモデル世帯の年金額を試算した結果は、生年月日ごとに以下の表のような金額になると発表されています。
 

上記の表の通り、すでに年金を受け取っている昭和16年度生まれに比べて、これから年金を受け取る世代の65歳時点の年金の給付水準は徐々に下がっていくことがわかります。これは、現役世代の保険料の上昇を抑えるために給付の調整を行うことを前提に試算が行われています。このような給付と負担のバランスをとる制度が「マクロ経済スライド」です。

また、経済動向が同水準であっても出生率が下がったり、経済動向が平成13年~14年のようなデフレ状態になった場合は、上記の給付水準の見通しは変わってきます。前提条件を変えて試算した給付水準(昭和51年度生まれ)は、以下の図にようになります。
 

上図のように、経済動向は現在と同様であっても、出生率が1近くまで下がれば給付水準は49.4%と50%を割ってしまいます。また、経済がデフレ状態に陥ってしまうと、出生率が現在よりも0.3ポイント以上高い平成元年ごろの出生率でなければ、50%の給付水準を維持することができなくなります。
 

マクロ経済スライドのしくみ


では、具体的に「マクロ経済スライド」とは、どのような仕組みなのか、みていきましょう。

公的年金制度は、平成16年の年金法改正で、保険料負担に上限を定めその範囲内で給付額を調整するしくみが導入されました(「保険料水準固定方式」といいます)。

さらに、少子化によって保険料を負担する現役世代が減少し、高齢化によって年金を受け取る世代が増加することによって給付と負担のバランスを保つことができないと見込まれた場合(この期間を「調整期間」といいます)、物価や賃金の上昇率よりも低く抑えた上昇率で年金額を再計算するという仕組みが導入されることになったのです。これが「マクロ経済スライド」です。

具体的に「マクロ経済スライド」とは、物価や賃金の上昇率に現役世代である「被保険者数の減少率」と高齢化世代の増加を示す「平均余命の伸び」を反映させた年金額の調整方法ということになります。

平成16年改正後の年金額の改定については、年金をもらい始めてからの3年間は賃金の伸び率、それ以降は物価の伸び率で改定されることになっています。マクロ経済スライドが実施されると、それぞれの伸び率から「スライド調整率」という被保険者数の減少率と平均余命の伸びから算定した一定率を引いた率で年金額を改定します。厚生労働省の試算では、平成35年度末までを調整期間と定めていて、スライド調整率は年平均で0.9%と発表されています。

ただし、このマクロ経済スライドは、平成16年改正後の年金額を計算するときに適用されることになっています。平成19年度現在においては、特例措置により、改正前の年金額が支給されていますので、実際には実施されてはおりません。改正後の年金額の水準が改正前の年金額の水準を超えた時から、スライド調整が開始されることになっています。

※少なくとも5年ごとに(平成16年度から起算して)、負担と給付のバランスを検討する財政検証が実施され、バランスを保つことが見込まれるようになった時点で、調整期間は終了する予定です。

マクロ経済スライドを図解すると…(次ページへ)
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